(2/5)

「くくくっ、貴様が起きたその瞬間、後悔しても最早遅い。貴様はわたしを怒らせてしまったのだからな……その身をもってして償ってもらおう」



不意に意識が浮上したのは、そんな嘲りを含んだ男の声のせいだった。



「たかが人間風情がわたしに楯突くとどうなるか、特と思い知るがよいっ!」



───……人の睡眠を邪魔しておいて随分な言い草である。

私はゴロンと寝返りを打ち……、



「って、起きんか! 馬鹿者っ!!」



声の主を拒絶するように背を向けると、そんな言葉が投げつけられた。

けれど。

そうは言われても私の身体は睡眠を欲しがり、再度眠りの世界へと旅立とうとする。



「えーい、どうしても起きぬというのであればコチラにも考えがある! あまり事を荒立てるつもりはなかったが、起きぬのなら仕方ない」



言ってコチラに近づいて来る何者かの気配。

そして事もあろうに声の主は私の身体に手を伸ばし───。



「こちょこちょこちょこちょっ」

「うにゃっ!? やっ、んっ、ひゃあっ!! ちょ……っ」



突如、脇腹をくすぐられ、私は思わず身を固くした。



「こちょこちょこちょこちょっ」

「やだっ……やめっ……」



身をよじり抵抗を示すものの、声の主は手を止める気配を見せない。

私は手を伸ばし、



「止めてって言ってるでしょうっ!?」



ぼふんっ!!



「ぶふっ!?」



手にした枕を思いっきり投げつけると、声の主は呻きながら、ようやく手を止めた。

見ればそこには見覚えの無い金髪赤目の美丈夫の姿。

私は目の前にいるその人をキッと睨みつけ、



「人が折角気持ち良く寝てるって言うのに邪魔しないでっ!」

「何を言う! わたしはお前にだな……」

「私は寝たいのっ! 眠たいのっ!!」

「いや……だから……」

「用があるなら起きてからちゃんと聞きますから、今は寝かせて下さいっ!」

「う、うむ……」

「分かったなら今すぐ出てくっ!」

「……す、すまない……」



私の剣幕に押されるように入り口へと後ずさる彼。

それを見た私は投げ付けた枕を拾って抱きしめ、再び眠りに……、



「って、違あぁぁうっ!!」



就けなかった。

見知らぬ彼はズカズカとベッドの縁まで歩み寄り、一気にまくし立てる。



「そうではないっ! わたしは貴様に復讐しに来たのだっ!」

「ほぉ、復讐ですか」

「そうだ! そして貴様に恐怖を与え、わたしの恐ろしさを改めさせるのだっ!」

「それは聞き捨てなりませんねぇ?」

「……は?」



怒りに任せて喚き散らしていた彼は、私以外の合いの手に気づくと、はたと固まり、
ギギギ……っとサビた人形の様な動きで振り返った。

そこに居たのは、一人の青年。



「な、何だ貴様はっ!?」

「あぁ、僕の事はお気になさらず。ただの謎の神官(プリースト)ですから」



言って謎の神官ことゼロスは、私を見てやれやれと溜め息を吐く。



「しかし……仕事の合間に様子を見に来たらコレですか。本当に厄介事がお好きですね、ユウさん」

「……別に好きな訳じゃ……」



不本意だと告げると、彼はそうでしょうかね? と首を傾げてみせた。

<<>>
[ 戻る ]


ALICE+