「くくくっ、貴様が起きたその瞬間、後悔しても最早遅い。貴様はわたしを怒らせてしまったのだからな……その身をもってして償ってもらおう」
不意に意識が浮上したのは、そんな嘲りを含んだ男の声のせいだった。
「たかが人間風情がわたしに楯突くとどうなるか、特と思い知るがよいっ!」
───……人の睡眠を邪魔しておいて随分な言い草である。
私はゴロンと寝返りを打ち……、
「って、起きんか! 馬鹿者っ!!」
声の主を拒絶するように背を向けると、そんな言葉が投げつけられた。
けれど。
そうは言われても私の身体は睡眠を欲しがり、再度眠りの世界へと旅立とうとする。
「えーい、どうしても起きぬというのであればコチラにも考えがある! あまり事を荒立てるつもりはなかったが、起きぬのなら仕方ない」
言ってコチラに近づいて来る何者かの気配。
そして事もあろうに声の主は私の身体に手を伸ばし───。
「こちょこちょこちょこちょっ」
「うにゃっ!? やっ、んっ、ひゃあっ!! ちょ……っ」
突如、脇腹をくすぐられ、私は思わず身を固くした。
「こちょこちょこちょこちょっ」
「やだっ……やめっ……」
身をよじり抵抗を示すものの、声の主は手を止める気配を見せない。
私は手を伸ばし、
「止めてって言ってるでしょうっ!?」
ぼふんっ!!
「ぶふっ!?」
手にした枕を思いっきり投げつけると、声の主は呻きながら、ようやく手を止めた。
見ればそこには見覚えの無い金髪赤目の美丈夫の姿。
私は目の前にいるその人をキッと睨みつけ、
「人が折角気持ち良く寝てるって言うのに邪魔しないでっ!」
「何を言う! わたしはお前にだな……」
「私は寝たいのっ! 眠たいのっ!!」
「いや……だから……」
「用があるなら起きてからちゃんと聞きますから、今は寝かせて下さいっ!」
「う、うむ……」
「分かったなら今すぐ出てくっ!」
「……す、すまない……」
私の剣幕に押されるように入り口へと後ずさる彼。
それを見た私は投げ付けた枕を拾って抱きしめ、再び眠りに……、
「って、違あぁぁうっ!!」
就けなかった。
見知らぬ彼はズカズカとベッドの縁まで歩み寄り、一気にまくし立てる。
「そうではないっ! わたしは貴様に復讐しに来たのだっ!」
「ほぉ、復讐ですか」
「そうだ! そして貴様に恐怖を与え、わたしの恐ろしさを改めさせるのだっ!」
「それは聞き捨てなりませんねぇ?」
「……は?」
怒りに任せて喚き散らしていた彼は、私以外の合いの手に気づくと、はたと固まり、
ギギギ……っとサビた人形の様な動きで振り返った。
そこに居たのは、一人の青年。
「な、何だ貴様はっ!?」
「あぁ、僕の事はお気になさらず。ただの謎の神官ですから」
言って謎の神官ことゼロスは、私を見てやれやれと溜め息を吐く。
「しかし……仕事の合間に様子を見に来たらコレですか。本当に厄介事がお好きですね、ユウさん」
「……別に好きな訳じゃ……」
不本意だと告げると、彼はそうでしょうかね? と首を傾げてみせた。
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