「それにしても、こんな夜更けに女性の部屋に無断で立ち入るだなんて非常識ですよ」
「……人のこと言えないくせに」
くすぐり魔を非難するゼロスだったが、今ここに居る時点で彼を責める資格が無いのも同じである。
しかし───ゼロスには私の言葉などどこ吹く風だった。
「ですがコレが貴方の復讐だと言うのなら、僕は止めません」
「って、そこは止めてよ……人として」
呆れた視線を投げ掛けると、ゼロスは「いやぁ〜」と頬を掻き、
「危害を加えるなら黙っていませんが、コレならば感謝こそすれ、糾弾するのは忍びないかと」
「だからって……」
いい加減眠気も覚めてきた私はゼロスに尚も言及しようとして、ふと違和感を覚えた。
「……コレならば?」
つまり、私はもう、彼に何かをされたと言うこと?
ベッドの上に起き上がった私は、自らの身体を見回してみるが、特におかしな所は見受けられ───。
いや。
見受けられた。
それも思いっきり、不自然な点が。
「何……これ?」
背後で揺れる長い尻尾。
それをたどると、尾てい骨の辺りからにょっきり生えていた。
引っ張ってみるものの、ちょっとやそっとでは取れそうにない。
「何で……?」
「それはわたしから説明しよう!」
呆然とする私に、くすぐり魔は髪を掻き上げ言う。
「……ってそれは良いですけど……貴方、一体何者なんですか?」
「ふふっ、わたしは高貴な闇の血を引く者───ヴァンパイアだっ!」
ばさぁっとマントを広げ胸を張るヴァンパイア。
「はぁ……そうですか」
「……………って、それだけか?」
「それだけとは?」
「いや、普通こういう場合悲鳴を上げるとか、取り乱すとか……」
「だってこんな夜中に大声出したら他の方々に迷惑じゃないですか」
「いや……それは……そうなのだが……しかし」
私の対応が不満だったらしく、ヴァンパイアは威厳がどーとか、恐怖心が……とか呟いている。
そんなヴァンパイアを尻目に、私はゼロスを見上げた。
その視線は何故か慈しむようなもので、居心地の悪さを感じる。
「だから何……?」
「いえ……ユウさんがあまりにも可愛いものですから目をそらせないんですよ」
「は?」
「くくくっ! そうだろそうだろっ! この可愛ゆさは最早罪っ!! にゃんこの存在は神っ!!」
にゃんこ……?
いつの間にか落ち込みから復活したヴァンパイアは、ガバッと立ち上がると天井を仰ぎ、手を広げて語りだす。
「計画は失敗したが、これはこれでまた良し! むしろビバ失敗! ナイス計画倒れっ!!」
「……あの……盛り上がってるところ申し訳ないんですけど、もう少し分かりやすく最初から説明して頂けませんかね……」
ヴァンパイアのテンションについて行けず、私は額に汗した。
いまいち何を言いたいのか分からないし……。
───すると。
ヴァンパイアはうっとりとした視線をコチラに寄越しながら、語りだした。
「あれは忘れもしない三日前の明け方……」
いや、さすがに三日前の事は覚えてるでしょう……。
「森の中でお前がした事を覚えているか?」
「ぇ……?」
突然話を振られ私は記憶を遡らせる。
三日前と言えば、確か森で野宿してて……。
でも特にこれと言った事は無かったハズだが……?
分からないと首を傾げ、私はヴァンパイアを見る。
「そう、あの日。お前は一匹のニャンニャンをわたしから引き離したのだ!」
「……………………」
そういえば。
森で猫を見つけてエサをあげたりしたけど……。
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