くんっ───と引っ張られる感覚に、僕は不思議に思いながら振り向いた。
そこには当たり前の話、ベッドに座り込んだユウさんが居る。
ただ、そのユウさんが、僕のマントの端の端。
本当に申し訳程度に掴んだそれが、僕を引きとめた原因だと知った。
何か用でもあるのだろうか?
そう思って彼女の名を呼ぶ。
「ユウさん?」
「…………うの?」
「え?」
ユウさんの言葉は小さ過ぎて聞き取れず、僕はもう一度、彼女の名を呼ぶ。
───すると。
ユウさんは何だかとっても不安そうにコチラを見上げ、そして言った。
「……行っちゃうの?」
───と。
数瞬止まる僕の思考。
その凶悪すぎる破壊力に、滅びるかと思った。
未だかつて、ユウさんから僕を求めるようなことを言われた事は無い。
いつも僕が押し掛け、ユウさんが渋々付き合ってくれる。
そんな僕たちが常なのに。
「行っちゃうの?」とは───。
それは裏を返せば行かないで欲しいという事……。
思いも寄らぬその言葉に、僕は我知らずユウさんを凝視していた。
そんな僕の視線を受けて、ユウさんは頬を薄く染めながらそわそわと視線をさ迷わし始める。
ユウさんが照れてる……?
一体これは……。
戸惑いが思考能力を著しく低下させる。
そんな折───。
「ゼロス……あの、そんなに見つめられると、その……恥ずかしいんだけど」
「え……あ、すみません。ユウさんがあまりにも可愛らしい事を仰るものですから、つい」
「………………」
頬を染め、もじもじとコチラを窺う彼女は、もはや『可愛い』以外の何物でもない。
その事を告げれば、ユウさんは一瞬驚いたように目を見開き、そして恥ずかしそうに「……ばか」と呟いた。
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