意識がふわりと浮上したような感覚がした。
次いで身体を包み込む安心感が広がり───。
ふと目を開けると、何故か視界にゼロスの顔どアップが飛び込んできた。
「あ、おはようございます」
「………………」
「気分はどうですか?」
「……微妙」
起きて早々人の顔と言うのは、清々しいものでは無い。
その事を非難するように、私は目の前の顔にジト目を向けて言った。
「って言うか、何してる訳?」
「何って……看病、ですかね?」
「看病?」
「ユウさん薬の所為で、ちょっぴり大胆になっていたものですから」
「大胆って……」
ゼロスの言葉に、訝しげながら思い起こすものの、そんな記憶はどこにも無い。
……と言うか、私どうしたんだっけ。
マルチナさんに惚れ薬を掛けられて……。
宿を取って、ゼロスの相手をしながら部屋で荷物の整理をして───?
…………ダメだ。
そこからの記憶が無い。
何か、物凄く眠たかったのは何となく覚えているけど……。
「ユウさんってば、とっても可愛かったんですよ?」
長考していた私を見かねてか、ゼロスがそんな言葉を口にする。
………………。
一体何をやったんだ、私は。
若干嫌な予感に苛まれつつもゼロスに尋ねれば、彼はニッコリ笑い「それは秘密です」とのたまった。
再度言葉に詰まった私は、溜め息を吐きつつゼロスから離れる。
これ以上問い詰めたところで、彼が口を割るとは思えない。
そう思ったが故の行動だったのだが、そこでようやく今の状態を理解できた。
どうやら私はゼロスの腕に抱かれながら眠っていたようなのだ。
その事と先程のゼロスの言葉を察するに、彼を抱き枕の代わりにでも要求したのだろうか?
……いや、でもそれ位の事を要求しただけで、ゼロスが秘密にするとも思えない。
………………。
本当に何やらかしたんだろう、私。
額に嫌な汗が流れた。
その様子を、実に楽しそうに見ているゼロス。
「……何?」
「いえ、やっぱりユウさんはこうでなくてはと思いまして」
「…………」
怪訝な表情を隠しもせずに尋ねれば、そんな答えが返ってくる。
それもニコニコと、嬉しそうな声で。
私はますます訝しんだ。
「どういう意味?」
「そのままの意味ですよ。今のユウさんが良いという事です」
妙にハッキリと言い切るゼロス。
そして彼は続けざまに、
「ですから、ありのままのユウさんでいて下さいね」
と、微笑んだ。
穏やかに、柔らかに。
その表情に、私の意識は魅き込まれる。
───が、それも買い物から返ってきたリナさん達が、お土産を持って部屋を訪れるまでの数瞬の事。
途端に賑やかになった事に苦笑しつつ、私は彼へと問い掛けた。
「せっかく差し入れも貰ったことだし、色々迷惑かけたお詫びもかけてお茶でもご馳走したいかなと思うのですが、他に用事はある?」
「いえ、大丈夫ですよ」
「じゃあ、腕によりをかけてユウ特製のミルクティーを振る舞っちゃいます」
「それは楽しみです」
その期待に応えるように、私はニコリと微笑み───。
どのケーキを食べるかで争っているリナさん達の中へと交ざったのだった。
あとがき
───魅了。
惹きつけ離さない、その笑顔。
(ニ周年記念 ライラ様へ)
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