さて。
二人で約束をしたのは良いが、根本的な解決は何もしていない。
何より。
面影があるとは言え、本当に目の前の少女がユウかどうかもわからない状況である。
取り敢えずゼロスはこの状況を説明する為に、リナ達の元へ行こうとして、ふと思い留まった。
「このまま連れていったら誘拐犯と誤解されちゃいますかね……」
「ごかい?」
見るからに寝起きの、ましてやパジャマ姿の少女を連れていくのは躊躇われる。
ゼロスは指をひと振りし、ユウにワンピースを着せると、満足げに頷いた。
「やはりユウさんには白いワンピースですね」
「すごーい! ゼロスお兄ちゃん魔法上手ね!」
クルクルと回りながら嬉しそうにはしゃぐユウを見て、ゼロスは相好を崩す。
そして彼女を抱き上げると、階下のリナ達の元へと歩き始めた。
「あぁっ!? それあたしのベーコンっ!」
「オレのローストビーフっ!」
食堂にいるリナ達の元に訪れると、そこではいつもの様に壮絶な食事の取り合いが行われており、ユウはゼロスにしがみつきながら彼女達を窺い見ていた。
───すると。
そんな二人の姿に一番最初に気付いたアメリアが、驚きの声を上げる。
「ゼロスさん、その子どうしたんですかっ!?」
「えーと……この子は……」
「ゼロスの隠し子か?」
「ち、違いますよぉっ!!」
ガウリイの問いかけに、慌てて首を振るゼロス。
「この子はユウさんです!」
「はぁ!? 何言ってんのよアンタ」
「ユウに相手にされず、とうとう子供に幻想を見出したか」
「ちょ、ゼルガディスさん! とうとうって何ですか、とうとうって! 僕を変態みたいに言わないで下さいっ!」
ユウを床に下ろしながら反論し、そして彼は宣言した。
「それに、僕はちゃんとユウさんに相手にされてますっ!」
『……………………』
ゼロスの言葉に沈黙が流れ、そして。
「可哀相にゼロスさん」
「現実が見えてないのね」
「いっそ、憐れだな」
「そっとしておいた方が良いんじゃないか?」
「って、聞こえてますから! 僕を憐れむのは止めて頂けませんか!!」
食事すら止め、コソコソと小声で話すリナ達に、ゼロスは声を荒げた。
それに対し彼女達は不憫そうな眼差しを向け、
「だって……ねぇ?」
「ユウさんに相手にされてるとか言うから……」
「そうだよなぁ……」
「まぁ、本人があぁ言ってるんだ。そっとしておいてやろう」
「……ですから」
再度反論しだしたゼロス。
それに対しリナは食事を再開させると、面倒そうに尋ねた。
「で、何がどうなってそうなったのよ?」
ゼロスとしては不完全燃焼だが、これ以上不毛な言い争いを続けても話は進まない。
彼は仕方なしにポリポリと後ろ頭を掻きながら、
「と、僕に言われましても……起こしに行った時にはこうでしたし」
「取り敢えずその子はユウで間違いないのね?」
「本人はそう言ってます」
「……本人……ねぇ?」
どう見ても5歳児以下にしか見えないユウを見て、リナは訝しげな目を向ける。
すると小さなユウはゼロスのマントを掴みながら、
「ユウです」
と言って、ペコリとお辞儀した。
「お姉ちゃん達はゼロスお兄ちゃんのお友達なの?」
くてん、と首を傾げ大きな瞳で見上げるユウ。
それに答えたのはアメリアだった。
「わたし達は正義の仲良し5人組+αな関係です! もちろんユウさんはわたし達の仲間ですよ!」
「ゼロスお兄ちゃんは?」
「残念ながらゼロスさんは悪の手先なのです! よってわたし達の敵ですっ!! さぁ、ユウさん! ゼロスさんの側になんか居ないで、コチラヘ!!」
言ってユウに手を伸ばす。
───が。
「……っ」
「あれ?」
ユウはゼロスにしがみ付き、離れようとしない。
「ユウさん、正義はコッチですよ?」
「…………」
コッチに来て下さいよ〜と腕を伸ばしたままのアメリア。
けれどユウは首を振ってゼロスの後ろに隠れてしまう。
「そんなっ!? 正義の味方より、悪の手先が良いって言うんですかっ!?」
「あ、アメリアさん……」
「ちょっとアメリア、落ち着きなさいよ」
「だってリナさん。ユウさんたら酷いんですよっ!?」
泣き付くアメリアに「はいはい」と、適当に相槌を打ちながらゼロス達を見るリナ。
彼女は疲れたようにゼロスに確認した。
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