二人は魔道士協会に着くと異界黙示録の手掛かりを探す為に、真っ直ぐ図書室へと足を運んだ。
この国の魔道士協会にある書庫はそこそこ大きく、古い文献やらなんやらが所狭しと並んでいる。
ユウ達は早速閲覧出来うる巻物や、それらしい古文書を漁り始めた。
そしてそれはユウにとって発見の連続だった。
彼女が居たのは今から千年後。
その頃には今ある文献や古文書が無くなっている事など珍しくない。
それになんと言っても元来彼女は本好き。
未知の知識を知ることは楽しかったし、例え知っている事が書かれていてもそれは復習になる。
今現在、魔族に襲われるような日々を送っているユウにしてみれば、それは使える魔法の幅が広がる事、果ては生き残る為の術に繋がる。
ゼルガディスもゼルガディスで、自分の身体を元に戻す為に余念がなく、飽くなき探求心も手伝って、目の前の文章に没頭していた。
───それからしばし。
辺りを気にする事なく読みふけっていたユウは、本を読み終わると顔を上げ辺りを見回した。
ここに来てどれくらいの時間がたったのだろう?
そう思っての行動だったのだが、書物が傷む事を考慮してか、この部屋には窓がない。
となると必然的に外の様子が分からず、ユウは立ち上がると、もう一人の本の虫を探す事にした。
とりあえず今まで見ていた本を棚に戻し、辺りをうろつく。
すると、一番奥の通路の壁際。
積まれた本に隠れるようにして、地べたに直接座っているゼルガディスを見つける。
ユウはそんな彼に苦笑しつつ、近づき声をかけた。
「ゼルガディスさん」
「…………」
「ゼルガディスさん?」
「…………」
「おーい、ゼルりん聞こえてる?」
しかし、本の世界に没頭している彼には届かない。
さて、どうしたもんだか……。
本に没頭するあまり、周りが見えなくなり、尚且つ聞こえなくなってるゼルガディスを見ながら、ユウは、ふむ……と考える。
そしてある事を思い付き、積んである本とは反対側に近づくと、ちょこんとゼルガディスの隣にしゃがみ込んだ。
それから躊躇う事なく彼の耳に、フゥッと息を吹き掛ける。
「どわっ!?」
ドサドサドサッ。
効果はてきめん。
あまりの事にゼルガディスは耳に吹き掛けられた方とは反対───つまり積まれた本へと身を仰け反らせた。
「やっと気付いてくれましたね♪ ゼルりん」
「な……なっ!?」
散らばる本の中、片耳を押さえて顔を赤くしている彼に、ユウは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「エルフ耳って、感度が良いんですね」
「おま……っ」
「アメリアさんに感謝してくださいね? 無傷で返すと言った手前、息を吹き掛けると言う手段に留まったので」
「…………」
その約束が無かったら一体何をされていたんだ。
そうツッコみたいところだったが、それじゃあ試してみます?とその気になられても困るので、溜め息を吐くだけに留める。
無論、文句は言わせてもらうが……。
「こんな事しなくても他に手段はあっただろう」
「でもこれが一番手っ取り早いかなと。身を持って証明済みなので」
「…………証明済み?」
聞き返すゼルガディスに、ユウは苦笑しながら答える。
「私もよく本に集中し過ぎてやられてたんですよ。耳に息を吹き掛けられたり、舐められたり噛まれたり」
「………………」
舐められたり噛まれたりじゃなくて良かった……。
顔を赤く染め、本気でそう思いながらゼルガディスは項垂れた。
そんな彼を見ずに、ユウは遠い目をして呟く。
「まぁ、この程度のちょっかいは良い方ですけどね……」
「……は?」
「日常的に過度なスキンシップを取る人が周りに居たんです。起きないからって、いきなりディープキスされた時は死ぬかと思いましたよ」
「…………」
元の世界での事を思いだし、はぁ……と重たく深い溜め息を吐く彼女。
どうやらコイツの周りの奴も一筋縄ではいかないらしいな……。
ゼルガディスはユウに親近感を抱きつつ、別のところでは妙に納得していた。
コイツがその手の事になれてるのはその為か、と。
前に、あの何を考えているのかさっぱりわからない、ゼルガディスにとっては嫌悪の対象でしかないゼロスにユウがキスをされた時。
ユウは取り立てて反応を示さなかったのだ。
赤くなる訳でも騒ぐ訳でも嫌がる訳でもなく。
ただ、深い深い溜め息を吐いただけ。
……まぁ、日常的にそんな事があったなら慣れてしまうのも頷ける。
と、そこまで考えて、ふとある事に気付いた。
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