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「装飾?」

「はい」



ゼロスに連れられやって来たのは、どこからどう見ても指輪やネックレスなどを扱うお店だった。



「……ゼロスが装飾品に興味があるとは思わなかった」

「僕が興味を持っていては可笑しいですか?」

「いや……可笑しくは無いけど」



ゼロスの格好からして、そういう物に興味があるとは思わなかったのだ。

似合わない……とは思わないけど。



「で、ゼロスは何が欲しいの?」

「コレです」

「……コレって」



ニコニコと彼が指示したのは、シンプルなシルバーリング。

一般的な物なので値段としてもお手頃で、私のお財布的にも優しい。

が、問題はそこでは無く。



「ペアリングじゃない」

「はい」



大小二つ並んで台に置かれている指輪。

その事についてゼロスに突っ込むものの、彼の意思が揺らぐ様子は無い。



「まぁ、ゼロスが良いなら良いけど」



溜め息一つ、財布を取りだし支払いを済ませようとすれば、何故かゼロスに待ったを掛けられる。



「あぁ、ユウさんはコチラをお願いします」

「は?」



一体どういう……?

そう思うものの、ニコニコ顔のゼロスは私の事などお構いなしにお店の人に声を掛け、さっさとお金を払ってしまっていた。

私に残されたのは、ペアリングの片割れと、その支払い。

ゼロスの手の中には、二回りほど小さなもう一方のリング。

訝しげながら彼を見るも、ゼロスは依然として笑顔のままである。

訳が分からない。



「ペアリングが欲しかったんじゃないの?」



ここに来てから二度目の溜め息を吐きつつ、今度こそその支払いを済ませてしまえば、彼は満足そうに笑っていた。

こんな事なら、自分でお礼の品を決めてしまえば良かった。

そうすればこんな思いをすることも無かったはずだ。

腑に落ちない、モヤモヤした思いを。



「……これで良かったの?」

「コレが良かったんです」



店を出て再確認すると、彼は何のためらいも無く頷く。

その事に若干の引っ掛かりを覚えるものの、取りあえず目的は果たしてしまおうと、私は彼に押し付けるようにそのプレゼントを渡した。



「はい、色々ありがとう」

「いえ」



口では『ありがとう』と言ってるものの、どう考えたってお礼を言う態度ではない。

………………。

きっと疲れてるんだ。

うん。

そうに決まっている。

心が晴れないのもその所為だ。

そんな色んなモヤモヤを疲れの所為にして、私は宿へ戻ることにした。

これ以上ここに居る用も無いし。

その事をゼロスに告げようと彼を見ると、何故か突然、手を取られた。



「……何?」

「これ、ユウさんにプレゼントです」



言ってゼロスは私に何かを握らさせる。

手の中には、固い感触。

…………。

ゆっくり手の平を開けば、そこには見覚えのある形。



「……何これ」

「何って指輪ですよ」



そう、それは今しがたゼロスに渡した指輪の片割れだった。



「………………何で?」



何の脈絡も無く渡されたプレゼントに、私は訝る。



「まぁ、快気祝いとでも思ってください」

「……………………」



快気祝い……ねぇ?

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