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シン……とした空気が漂っている中、他の人が居ないかと調べてみたが、やはり誰も居ない。

……そう。

二人は完全に閉じ込められてしまったのだ。

図書室の中に。



「……奥に居たせいで気付かれなかったんですかね?」

「どうだかな」

「?」

「案外お前さんに袖にされた腹いせに、態と閉じ込めたのかもしれん」

「ぇ?」



言ってる意味が分からないとばかりに、ユウは隣に佇むゼルガディスを見上げた。

そんな彼女に、彼はやれやれと思いながら溜め息を吐く。



「ここの司書、お前に随分親切だったな」

「はい?」

「高い場所にある本を率先して取ったり、文献を一緒に探していただろう」

「はぁ……でもそれが司書さんのお仕事でしょう?」



それが下心からくる親切だったとも知らず、きょとんと首を傾げるユウに、ゼルガディスは先程よりも更に重い溜め息を吐いた。

普通、司書だからといってそこまでしないのが一般的。

高い所にも手が届くように踏み台が置かれているし、懇切丁寧に説明もしてくれない。



「お前は自分の事になると鈍いな」

「何だか、そこはかとなく馬鹿にされてる気がするんですが?」

「……食事に誘われてただろう」

「え?」

「……美味い店を知ってるから教えてやると言われなかったか?」

「あぁ、リナさん達に教えてあげようと思って、ちゃんとお店の場所聞いておきましたよ」



ニッコリ笑うユウに、ゼルガディスは疲れたように言う。



「それがただの好意で教えてくれたとでも思ってるのか?」

「ぇ?」

「おめでたい奴だな」

「やっぱり馬鹿にしてませんか?」

「奴はお前さんと行きたかったんだろうさ。それを場所だけ聞いて、とっとと本を読みはじめれば袖にされたと思っても仕方ないだろう」

「ちゃんとお礼は言いましたよ?」



首を傾げる彼女に、ゼルガディスはそう言う問題じゃないと嘆息する。



「お前に好意をもった奴は大変だな」

「それじゃあまるで、私が鈍感で無神経みたいじゃないですか」

「違うのか?」

「…………違うもん」



むぅと顔を顰め、面白くなさそうにふいっと横を向くユウ。

それは普段からは考えられない程に幼いもので、



「くくっ、お前でも拗ねる事があるんだな」

「ぅー、ゼルガディスさんの意地悪……」



楽しそうに笑うゼルガディスに、ユウは恨みがましい視線を向けた。



「大体、見てたなら助けてくれたって良いじゃないですか」

「困ってたのか?」

「…………困っては……なかったですけど」

「なら助ける必要も無いだろう」

「……それはまぁ、そうなんですけど……魚心あれば水心というか何と言うか……」

「そんな事より、コレからどうするかだが……」



何やらブツブツ呟くユウを無視してゼルガディスは扉を見る。



「今、完全に話をそらしましたよね」

「…………」



何と返していいか分からず苦笑を漏らす彼に、ユウは「まぁ、良いですけどね」とふて腐れながら扉を見やる。



「問題はどうやって外に出るかですよね。外から侵入するのは簡単ですけど、中から脱出するのは……」

「そうだな」



扉には厳重に施された鍵と封錠(ロック)の魔法がかけられている。

とりあえず封錠(ロック)の方は封除(アンロック)で開けてみたのだが、問題はもう一つの普通の鍵。

ここで使っているのは南京錠タイプらしく、内側からではどうしようもなかった。



「とりあえず…リナさん達が気付いてくれるのを待ちますか」

「それが妥当だろうな」



無理矢理ここを脱出するのは簡単である。

振動弾(ダム・ブラス)あたりで壁を破壊すれば良いのだ。

しかし、それには多大なリスクも付きまとう。

すなわち壊した壁の弁償。

最悪、賊と間違えられて捕まる可能性もある。

そんな面倒はなるべく避けたい。

幸いリナ達が来てくれなくても、朝まで待てば扉は開かれる。



「さてと、それじゃあこれからどうします? まだ調べますか?」

「そうだな。普段閲覧出来ないものを拝めるチャンスかもしれん」

「成る程……えーと、閲覧禁止の棚は……」



言ってユウは奥へと進み、急にピタリと歩みを止めた。



「……どうした? ユウ」



訝るゼルガディス。

が、ユウは答えない。

いや、答える事が出来ないのだ。



「おい?」



動かない彼女の肩に、ポン……と手を置く。

と、その瞬間。





「きゃあぁあっ!?」



普段の彼女からは考えられないような悲鳴が、彼の耳を襲った。

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