「何考えてるんだっ! こんな所で火炎球なんぞ使ってみろ! 火に巻かれるのは目に見えてるだろうっ!!」
「だって……」
「だってじゃない! 大体、虫一匹で騒ぎすぎなんだ! 魔族相手に平気で喧嘩を売りつけるくせに、何で虫ごときにそこまでビビる必要がある」
「魔族は話が通じますもん」
「阿呆、話が通じても相手は魔族だぞ? この際言っておくが、お前は危機管理が甘すぎる」
「………………」
「そもそも普段から隙だらけでどうする」
「そんなことは……」
「そんなことあるんだ。いいからそこに座れ。今日の事だってそうだ……」
ゼルガディスはユウの反論を許さず、自分の目の前に座らせると普段の彼女の行動を諌め始めた。
「いいか? まずむやみやたらに自分の名前を教えるな。知らない奴について行くな」
「………………」
「誰彼構わず他人から物を貰うな」
「………………」
「一人で街をうろつくな」
子供に言って聞かせるように、延々と注意し続けるゼルガディスに、ユウはそっと息を吐いた。
何やら触れてはならないスイッチを押してしまったらしい……。
それも、とても厄介で面倒な。
しかし今更後悔しても遅い。
「それから……って、聞いているのか!?」
「はい。聞いてます聞いてます」
意外と心配性なゼルガディスにユウは正座したまま頷いた。
彼の気が済むまでは解放してくれそうにない。
そう思うと溜め息しか出てこない。
そして熱弁を振るうゼルガディスと苦笑するユウを尻目に、この事態の原因となったクモはさっさとどこかへ消え去っていた。
「いきなり竜破斬を唱えるな。魔族相手に軽口を叩くな」
「…………」
「それから……」
───その後。
朝が来て扉が開くまでの間。
延々とゼルガディスのお小言は続いたという。
「……眠いです」
「夜更かしするからだ」
「って、誰のせいですか。誰の……」
あとがき
お小言。
それは愛情の裏返し……かもしれない?
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