私は、今なお黙り続けているゼロスに向き直り、
「はい」
と、彼の前に手の平を差し出した。
すると、彼は固まりその手を凝視する。
そしておずおずと私の顔を見て、再び手に視線を落とした。
「手を繋ぎたかったんじゃないの?」
「ぇ……っ?」
「違った?」
言って彼の顔を見ると、いつもの笑顔がドコか困ったように変化していて、図星だったんだなと確信する。
「さっさとしないと日が暮れちゃうよ?」
「……でも」
「5・4・321……」
ぱしっ。
突如カウントダウンし始めた私に、ゼロスは慌てて手を取り、その後「……ぁ」と呟いた。
が、私は気にせず、ゼロスの手を握って歩き出す。
「ちょ……ユウさんっ!? 良いんですか?」
「何が?」
「何って……その……」
「普段お構いなしに引っ付いて来るのに。手ぐらい、どうって事ないでしょう?」
「……でも……ユウさんは嫌じゃ無いんですか……?」
「何が?」
「人前でこういう事するのは苦手なんじゃないかと……」
その言葉に、私は頬が緩むのを感じた。
ゼロスなりに気遣ってくれていたのが嬉しくて。
「大丈夫だよ。嫌なら最初から手を差し出したりしないし」
「………………」
「でもゼロスって変わってるね」
「ぇ?」
ゼロスの手を引き、道を行きながら言ったその言葉に、彼は訝りの声を上げる。
そんな彼に振り返り、私は微笑み言った。
「迷子防止が羨ましいなんて」
「………………は?」
「手を繋ぐのは迷子にならない為の対策でしょう?」
「え゛?」
「本当、ゼロスって変わってるよね」
そう言った私に、ゼロスはガックリと項垂れ───そして。
「………………ユウさんには言われたくないです、それ……」
と、ポツリと呟いた。
あとがき
繋がり。
あるはずのない、手袋越しの温もりを感じて───。
(5万Hit企画 アキ様へ)
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