「って、こんなこと言い合ってる場合じゃなかったわね」
はたと、リナさんが動きを止めたのは、ガウリイさんをスリッパでど突き倒した後だった。
「そうですよ! 早いとこ次の街に行かないと!」
「問題はユウだけど……ガウリイ、頼んだわよ」
「おう、任せとけって!」
驚くほどのスピードで話がまとまり、目の前には、しゃがむガウリイさんの背中。
相変わらずタフだなぁ、ガウリイさん。
もう回復してる。
「………………」
……って、そうじゃなく。
これは一体どうしろと?
戸惑いにリナさんを見上げると、「早く乗んなさいよ」と急かされた。
……乗れって。
おんぶしてくれるという事なんだろうが……。
「……流石にそこまでしてもらう訳には」
「この期に及んで、まだそんなこと言うかアンタは!」
「水臭いですよ! こんな時はお互い様なんですから、甘えちゃって下さい!」
「運ぶのは旦那だがな」
「でも……」
申し訳なさ過ぎて躊躇っていると、それまで黙っていたゼロスがニッコリ笑って、更に話をややこしくしてくれる。
「では、僕が運びましょうか?」
それを聞いたリナさん達は、ピシっと音を立ててフリーズした。
しかし直ぐに気を取り直すと、彼女はゼロスへとジト目を向ける。
「どうせ、またアンタは人の弱みに付け込もうとしてるんでしょ」
「まさか。僕は、ただ純真にユウさんを心配しているんですよ」
「…………それを信じろと?」
「弱ってる人間をどうこうしようとは思いませんよ」
「どうかしらね?」
不審そうにゼロスを見るリナさん。
やがて、これ以上の時間は無駄と考えたのか、彼女は短い息を吐き出した。
「ま……そこまで言うなら、あたしとしてはどっちでも良いんだけど。ユウはどっちが良い?」
「ぇ?」
「乗るのはアンタなんだから、アンタが決めなさい」
「ぁ……う……その……」
ちらりと窺えば、未だしゃがんだままのガウリイさんと、ニコニコ手を差し伸べているゼロスの姿。
まぁ、リナさんの言う通り、立てないのだからお願いするしかないのだが……。
「………………」
…………うぅ、仕方ない。
私は一つ決心すると、おずおずと目の前の服を掴んだ。
「……あの、お願いします……ガウリイさん」
その瞬間。
背筋に得も言われぬ、寒気が走った。
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