「ねぇ、ゼロス」
「何ですかぁ?」
恨みがましそうな視線を送る彼に、私は微笑みながら言う。
「左手の人差し指にする指輪の意味って知ってる?」
「…………いえ」
「積極性をアップとか、精神的に前向きでありたいとか。その他にもあるんだけど」
「何ですか?」
「知りたい?」
「……はい」
尋ねる私に、ゼロスはコクンと小さく頷いた。
「ん……素直でよろしい。もう一つの意味、それはね」
「それは?」
「秘密♪」
彼の十八番で誤魔化し、笑顔を向ければ直ぐさま非難の声が上がる。
「ユウさぁんっ」
「便利ね、この言葉」
「うぅ……酷いです……」
「……さてと」
いじけたゼロスをそのままに「宿に戻るかな」と微笑み言えば、一瞬の沈黙の後「……そう……ですね」と苦笑しながらの返事が返ってきた。
そして彼は立ち上ると、どこか諦めたように溜め息を吐く。
流石にちょっと可哀想だったかも。
そう思って、私は首を傾げながらゼロスに尋ねてみた。
「それとも一緒に街を見て回る?」
その問いに、彼は驚き目を見開く。
…………。
私がデートに誘うのがそんなに意外だったのだろうか?
まぁ、どちらかと言うと宿でゴロゴロしていたい方だけど。
でもゼロスにそんな姿を見せた事はないのに、そこまで驚かなくても……。
若干腑に落ちない思いをしながらも、私は再度尋ねる。
「それとも私とデートは嫌?」
「……いえっ、そんな事は!」
「そ? じゃあ、行こうか」
言って手を差し出せば、ゼロスは戸惑いつつもその手を取ってくれた。
そして───。
「折角ですから、食べ歩きでもしましょうか♪」
「……そうね」
そして私達は歩き出す。
───……繋いだ手は離さずに。
あとがき
矢印・方向・ベクトル。
左人差し指の意味───
『人知れず心に誓う事』
内緒の心の行方。
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