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簡単な仕事だと思っていたのに。



「ちょっと疲れたから休憩しようか」

「…………またですか?」

「そんな事言うけど、旅慣れてる君とは違って街暮らしの人間には結構な距離を歩いたと思うよ。ほら、さっき休憩した場所なんてとっくに見えないし」

「…………」



比較的平坦な道を数日歩いて護衛をする。

ただそれだけの事がこんなに面倒な事になるなんて。



「それにユウちゃんだって疲れてきてるだろ?」

「……まぁ、多少は」

「ほら!」



水を向けられ答えれば、我が意を得たりと言わんばかりにアルバートさんは道端の岩に腰掛ける。

本当の事を言うならばそれほど疲れてはいない。

ゼロスが言ったように先ほど休憩したばかりだし、私にもそれなりに体力がついてきているのだろう。

かと言って機嫌を損ねるような事を言って報酬額を減らされても困る。

非常に困る。

これが成功報酬じゃなく、前金だったなら適当に流すのだけど。



「いやぁ、それにしてもこんな可愛い子に守ってもらうのはちょっと気が引けるなぁ。あ、本当に危なくなったら俺が守ってあげるからねー」

「……仕事なのでそういう訳には」

「ユウちゃんは真面目だねぇ」



……私が真面目かどうかはさて置き。

アルバートさんに護身術の類があるようには到底思えない。

先程彼自身が言ったように、普通の街暮らしをしていれば必要も無いだろう。

そんな彼に、『本当に』危なくなった時、頼れるはずもない。

ゼロス程の実力があれば、私と言うお荷物があっても、ある程度の事は切り抜けてしまうのだろうけど。

そんな事を思いつつ彼を見やれば、ゼロスはいつものニコニコ笑顔を張り付けたまま、けれど雰囲気はピリピリしたものを放っていた。

どうにもアルバートさんの事を良く思っていないらしい。

まぁ、道中我儘放題だったから仕方ないと言えば仕方ないかもしれないけど。

私はひとつ息を吐き、アルバートさんには聞こえないように声を顰めながら彼の名を呼んだ。



「ゼロス」

「何です?」

「嫌なら無理して付き合わなくても良いよ?」



そもそもこの依頼は私が受けた物であって、ゼロスは暇つぶしの付添いなのだ。

それにこの辺は治安も悪くなさそうだし、この程度の依頼なら一人でも何とかなる。

嫌な思いをしてまで付いてくる必要はない。

そう思って彼に告げれば、ゼロスは眉間に皺を寄せ、



「僕は必要ないと?」

「……そういう事を言ってるんじゃなくて、無理に付き合う事は無いって言ってるの。この辺は治安も良さそうだし、私一人でも……」

「なら彼一人でも大丈夫じゃないですか? 僕たちが彼の避暑に付き合う義理はありませんよ」



言って彼は面白くなさそうに私を見る。



「そんな訳にいかないでしょう。依頼は受けちゃってるんだから」

「破棄すればいい事です」

「街の中ならまだしも、道中でそんな事出来る訳ないでしょ」

「大丈夫ですよ、ユウさんが仰ったように治安も良さそうですし」

「それでも万が一って事があるでしょ? ゼロスなら一人で簡単に対処出来る盗賊や野生動物とのやり取りも、彼には命がけの事なの。転んだだけで怪我をする普通の人間なんだから、何かあってからじゃ遅いのよ」

「……分かってますよ、それ位」

「じゃあ無茶な事言わないでよ」



まるで子供の駄々のように呟く彼に、本日何度目とも知れない吐息が漏れる。

何だって彼はココまで機嫌が悪いのか。

どうやら一人で帰るつもりもないようだし、この状況はまだ続きそうである。

その事に憂鬱な気分になりながらも、私は日程を少しでも繰り上げようと、休むアルバートさんに声を掛けた。

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