風が吹き荒れ、私を中心に色んなモノが吹き飛んでいく。
土、木の葉、依頼人。
そうして風が納まった頃、術を開放して直ぐに唱えていた呪文を解き放つ。
狙うは目の前の奇抜な純魔族。
「烈閃槍!」
が、流石は純魔族。
私の攻撃は当たる直前で空間に渡られてしまい不発に終わる。
「ふん、随分と威勢のいい娘だ。そんな所が気に入っているのか? 獣神官」
「…………」
「だが威勢だけでは……」
「烈閃牙条!」
「お、おいっ!?」
「黒妖陣!」
「人の話を……」
「火炎球!」
色んな術が純魔族へ襲い掛かる。
光の槍が、黒い何かが、光球が。
けれど、冷静さを欠いたその攻撃はことごとく外れてしまった。
「ふははっ! そんな直線的な攻撃ばかりでは当らんぞ! 火炎球なんぞは当たったところで効きもしないがな!」
膝に手を付き息を整える私に、余裕の笑みを浮かべて語る純魔族。
「ご丁寧に、講釈どうも」
しかし、精霊魔法が魔族に効果が無いのは百も承知。
望むと望まざるとにかかわらず何度リナさん達と魔族を相手にしてきた事か。
そんな私が何故火炎球を使ったかと言えば、単なるストレス発散の為である。
それを告げると、端で佇むゼロスの顔が何とも言えない表情に歪んだのが見えた。
まぁ、突っ込みたい気持ちは分からないでも無い。
が、おかげでスッキリしたのも事実。
それは思考においても言える事だった。
「さてと」
ふぅ、と一息つき、魔族を見据える。
「ゼロスに用があるみたいですけど、今は私に付き合ってもらっているので、日を改めてから来ていただけませんか?」
「ふん、そんな馬鹿げた要求に応じる訳が無いだろう」
「そうですか、残念です」
受け答えしつつも頭では別の事を考え、次の行動に移る。
あまり分があるとは言えないが、今はこれに賭けるしかない。
すなわち、隙を突いての一撃必殺。
これである。
こと純魔族との戦闘においては空間を渡って逃げられてしまう以上、真正面からの攻撃は避けるべきなのだ。
ましてや今は一対一。
他に気を取られることが無いとなると、益々こちら側が不利な状況である事は揺るぎようも無い。
となると、卑怯だ何だとは言ってられない。
私は腰に刺してあるショート・ソードを手に取ると強化呪文を唱え、前に構えた。
「ほう? それでわたしの相手を?」
「…………」
それには答えず、私は小さく口を動かす。
もともと護身用にと持ってはいるが、私の剣の腕はそれ程良くない。
ガウリイさんやゼルガディスさんは言うに及ばず、盗賊相手に対応できるリナさんにも及ばない。
けれど少しでも時間稼ぎに繋がるかもしれないなら、使わない手は無い。
私は赤く輝くショート・ソードで牽制している内に唱え終わった術を解き放った。
「地撃衝雷!」
その声に応え地面が揺れ、巨大な岩の錐が地面に無数に隆起する。
「ふん、こんな術、当たらねばどうという事もないし、当たったところでどうなるものでもないと言ったばかりであろう!」
奇抜な純魔族の声が錐の向こうから聞こえてくる。
が、私はそれに構うことなく足を動かした。
呪文を唱えつつ、術でデコボコしてしまった道を回り込む。
唱えているのは精霊魔術最強の術、崩霊裂。
錐を目隠しにして相手の横手に回り、コレをお見舞い───って!?
「ひゃっ!!」
まずい。
崩霊裂をお見舞いするつもりだったのだが、不安定な地面に足を取られ体勢を崩し、その拍子に唱えていた呪文も悲鳴で途切れてしまった。
さらに───。
「そこかっ!」
声で私の居場所まで教えてしまい、内心ほぞを噛む。
膝と手を付き何とか転倒は免れたものの、直ぐに魔族が目の前に現れ、背中に嫌な汗が流れた。
「ふふふ、獣神官に更なる負の感情でも起こしてもらおうか」
そう言うのと同時に、魔族の手にした剣が私の脚に容赦なく振り下ろされた。
ALICE+