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「いやはや……ここまで歓迎されないと、いっそ清々しいですね」



塔へ帰ってきて着替えを済ませ、先程の嘘を実行するためにゼロスにお茶を出すと、彼は苦笑しながらそう呟いた。

それに対し私はカップを傾けつつ、2人のゼロスへの態度を思い出す。

それは今に始まった事では無く、昔からのものだった。

ユーリは笑いながらゼロスに剣を向け、ディルは辛辣な言葉をぶつける。

ちなみにその2人はと言えば、役立たずとの言葉を投げつけ部屋から追い出したクレハを引きずって何処かへ行ってしまった。

気を利かせてくれたのか、それとも興味が無かったのか。

そんな事を思いながら私はポツリと言う。



「それだけ2人に認められてるってことだよ」



すると余程納得できなかったのだろう。

ゼロスはカップを片手に数瞬固まり、これでもかと言う程眉間にしわを寄せた。



「…………何処がですか?」

「だって容赦ないでしょ?」

「…………」



どうしてそれが認められることになるのか、分からないと言う顔をする彼に、私は2人の事について話す。



「ディルはね、どうでもいいと思っている相手には口もきかないの。我関せずと言った風だし」

「…………」

「ユーリはこの世界の生き物は好いてるから。基本的には人類博愛主義者だけど、その気になれば犬や猫の動物や草木に至るまで種族は関係なく愛でて、惜しむことなく愛情を注ぐんじゃないかな」

「とてもそんな風には見えませんでしたが……」



承服できないとばかりに顔を歪めるゼロス。

まぁ、ユーリがゼロスに……と言うより魔族に対し良い感情を持っていない事は確かだ。



「……何と言うか、ユーリにとって魔族は敵だからね」

「それは彼に限った事では無く、当然の事では?」

「あー、敵は敵でもただの敵じゃなくて」

「……は?」



恋敵。

そう言ったらゼロスはどんな顔をするのだろうか。

少しばかり興味があるものの、人の想いを暴露して喜ぶ趣味は無い。



「まぁ、色々あるのよ」

「……はぁ」

「でもだからと言って心底嫌ってる事は無いはずだよ」

「そうでしょうか?」

「うん」



例え世界を滅ぼそうとしていても。

『彼女』の創った世界を滅ぼそうとしていても。

魔族も『彼女』が生みだした種族だから。



「だからそんなに気にしなくても大丈夫だよ」

「…………」

「それに、さっきユーリが身を引いたうんぬん言ってたけど、ゼロスに『何か』を言ったのは彼らじゃないでしょ?」

「それは……」

「誰がどんな事を言ってゼロスが私の記憶を消す経緯に至ったのかは分からないけど、彼らはそこまでゼロスの事を疎んでいないはずだから」



言ってゼロスを窺えば、彼は面白くなさそうな表情を見せた。

そして「随分と自信がおありのようですね」とこれまた面白くなさそうに呟く。



「長い付き合いだからね」

「何か、こう……すごく釈然としないです」

「そう?」

「はい」



お茶の入ったカップを気に食わなさそうに見つめるゼロス。

妬いているのだろうか?

そんな馬鹿な事を考えつつ、私は肩を竦めた。



「まぁ、私としてはゼロスの事、嫌ってないと思いたいなって願望でもあるんだけどね」

「……どうしてです?」

「だって自分の好きなモノを否定されるのって嫌でしょ?」

「それは……つまりっ!」

「ゼロスだってホットミルクは邪道だって言われたら嫌でしょ?」

「って、どうしてそこでホットミルクが出て来るんですかっ!」

「どうしてって、分かりやすいかなと思って」

「そこまで僕はホットミルクに心酔してませんっ!」

「……そうなの?」

「いや、そこで真顔で聞かれると答えに困るんですが……」

「まぁ、とにかく。今度機会があれば聞いてみたら? きっと顔を顰めながら『好きでも嫌いでもない』って言われると思うから」

「それって認められてはいないんじゃあ……」



私の言い分にぼやくゼロス。

そして一つ溜め息を吐くと、そこで一区切りを付けたのか、肩の力を抜きながら「そうですね」と呟いた。

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