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「……え?」

「聞こえなかった? 魔族も歳をとると耳が遠くなったりするのかい?」

「いえ、あの……そういう訳では。と言うか、それはつまり」



何かあったらタダじゃおかない。

つまり言い換えれば、



「何も無ければ側に居ても良いと……?」



聞き返す僕に、ユーリさんは剣を収めて肩を竦めながら言う。



「それがユウの望んでいる事だからね」

「…………」



何とも拍子抜けするような言葉だった。

ユウさんが望んでいるから。

たったそれだけの理由で、魔族である僕を?



「随分と驚いている様だが、私達は鬼でも悪魔でも魔族でも無いですから」

「そうそ、ユウの望むことは出来るだけ叶えてあげたいし」

「…………僕、てっきりお二人には完全に嫌われている物だと思っていましたが」

「勘違いしないで頂きましょうか」

「嫌いじゃないけど、好きな訳でもないから。僕たちの可愛い可愛いユウが、どこの馬とも知れない……もとい、『あの方』の部下の魔王の部下の腹心の部下なんかにかっ攫われてしまったのだからね」

「……何か物凄く悪意を感じるのですが……」



そして物凄くしかめっ面をしていらっしゃるディルさんが溜め息を吐く。



「まったく、ユウには色々な事を教えましたが、男を見る目も養わせるべきでしたね」

「ホントにねー。ミステリアスな男がモテるのも分かるけど、ここまで謎なのもどうなのって気もするよ」

「………………」



何だろう。

何故だかとても居た堪れない気持ちになってきた。

ともすれば彼らに謝ってしまいそうな程に。



「まぁ、まだまだ言い足りないけど、取りあえず……ユウを泣かせたりしたら承知しないからね」

「……はい」

「もしその様な事があれば、あらゆる手段を使って後悔させてやります」

「あ、滅ぼすとかでは無いんですね」



一見寛大な処置に聞こえる言葉に、僕は何とも言えない気持ちになる。

彼らなりの優しさ……。

勿論そんな訳が無い。

彼らの事を分かり始めた今ならハッキリとその意味を理解する事が出来る。



「そんな事したらユウに怒られるじゃないか」

「…………ですよね」

「それに、怒られるならまだしも軽蔑なんかされちゃったら生きた心地がしないよ」



大げさな。

とも思うが、完全に否定する事も出来ない。

僕にとっても、そして彼らにとっても、ユウさんの存在はそれ程までに大きなものなのだろう。

いつの間に、こんなに想うようになったのか。

初めて会った時はこんな事になろうとは思いもしなかった。

それが次第に興味が出て、彼女を手放せなくなって。

ユウさんが消えてからまた出会える日を夢見て、その願いが叶って。

小さいユウさんと再会してから益々愛しさが募って。



まったく、魔族としては失格ですね……。



そんな事を思っていると、不意に僕の手を取るユーリさんに微笑みかけられた。

訝しげる僕に対し、彼は言う。



「魔族の事は気に入らないけど、ユウを想う者同士、これからユウを見守り隊として宜しく頼むよ」

「……はい?」

「それともユウ至上主義同盟の方が良い?」

「え、いや……あの」



いきなり同盟だ何だと言われ、流石の僕も思考が混乱する。

ディルさんの方を見やれば呆れた眼差しをユーリさんに注ぐだけで、助け舟は出そうにない。

そしてこっちの当惑などお構いなしに彼は続けた。

とんでもない内容の台詞を。



「あ、スキンシップまでは許すけど、それ以上の事をしでかすつもりなら出入り禁止にするからそのつもりでね」

「……っ」

「貴方にそんな度胸があるとも思えませんがね」

「な、何を根拠にっ」



とは言え、そんな事は考えた事も無かった。

ただ側に居られるだけで満足。

その想いに嘘は無い。

けれど、そんな煽り方をされればついつい大きな声で反論してしまい。



───それから十数秒後。

ユウさんの部屋の前で騒いでいた僕たちは、彼女の逆鱗に触れ、仲良く正座してお説教される事になる。














あとがき

同盟。
共通の目的───ユウの幸せを願う事。


(20万Hit企画 (´・ω・`)様へ)

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