「……ユウさん……」
「………………」
眉を顰めコチラを見すえるゼロスに、私は返事をすることが出来ない。
「お別れ……と仰っていましたが……どう言うことですか?」
「言葉の通り……です」
「じゃあコレは何なんです?」
地面に描かれた線を指し、ゼロスは問う。
解りきった事を。
「見ての通りの魔方陣ですよ」
「何故こんなものを?」
「必要だから」
彼の質問に答える度、
彼の声を聞く度、
胸にチクリと痛みが走る。
「必要って何にですか?」
「…………」
「ユウさん、教えてください」
悲しみを押さえ込むような声音。
理不尽さを圧するような落とされた声。
「答えてください、ユウさん」
私は深く息を吐き、顔を上げる。
真っ直ぐに。
ゼロスの姿を目に焼き付けるように。
そして私は呪文を唱え始めた。
それは先程中断されてしまった魔法の詠唱。
永久と現在を流れ行く───
「ユウさんっ!?」
突然のカオス・ワードに驚くゼロス。
けれど、次の言葉に彼の驚きは驚愕に変わった。
───金色なりし闇の王
常は閉じられている紫色した両眼が開かれる。
その様子に。
いつも冷静な彼からは想像出来ないような驚きように私は微笑し、言葉を紡ぎながら彼へと腕を伸ばす。
微動だにしない彼の顔を私の手が包み込み、そっと口付けると彼の瞳は更に見開かれた。
それから『ごめんね』と『さようなら』。
両方の想いを込め、彼の手を握りしめる。
その手の中に、ある物を託し。
そして───。
今まで紡いでいた呪文を解き放つ為、最後に力ある言葉を口にする。
「ま、待ってくださいっ!」
「────……」
「ユウさんっ!?」
時空を越える魔法は私を光で包み込み、
ゼロスの言葉も飲み込んだ。
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