ツギイト(1/6)

瞼を閉じ意識を集中させ、次に目を開けた時には暗闇が広がっていた。



「……は?」



あれ、間違えたかな?

そう思ったのも束の間。

ガクンと体が傾き、私は真っ逆さまに落ち始める。



「ちょ……!?」



眼下に黒い何かが迫り、本能的に腕で顔をかばった。

その瞬間。



ずざざざざざっ!



耳元で木々が風でざわめくような音と共に、体中を襲う痛み。

何が起きているのか分からない中、突然それは終わりを迎えた。

いつの間にか閉じてしまっていた目を開け、辺りを見渡すと、ようやく事態が呑み込めてくる。



「……あぁ、座標軸間違えたのか……」



私は誰にともなく呟いた。

マントが枝に引っ掛かり、木の上で宙ぶらりんと言う形で。

……どうやら出現場所の指定を間違え、空中に放り出されたらしい。

その後、重力に逆らえない私の体は地面に向かって真っ逆さま、と言う訳である。



「……取りあえず」



今はこの状況を何とかしてしまうのが先決だろう。

ちゃんと過去に来れたのかも確認したいし。

そう思って無造作に動いたのがいけなかった。

私の耳にビリっと、布を裂く不吉な音が届いたのだ。

慌ててマントを見やると、重さに耐えられなくなった裂け目が、徐々に広がっているのが見て取れる。

私は咄嗟に浮遊(レビテーション)を唱え───そして。

ビリビリビリっ!

どさっ!



「……ったぁ……」



呪文が間に合わず、地面に落下と言う情けない事態に。

反射的に受け身を取ったので、顔面着地と言う事にはならなかったけど。

それにしたって痛すぎる。



「ぅー、ついてない……」



呻きながらも何とか立ち上がり、私は改めて辺りを見渡した。

先程迫って見えた黒いものの正体は森の木々で間違いない。

そして見上げれば生い茂る木の合間から星空が、見下ろせば道と言うにははばかられ、ケモノ道と呼ぶには立派過ぎる道が続いていた。

とにかく今は、ココがどの時間軸で、どんな国であるかを把握する為にも街に向かわなければ。

こんな所で野宿もごめんだし。

私は気の向くまま足を進め───と、次の瞬間。

夜のしじまに爆音が響き渡った。



ちゅどぉぉん!

ずどぉぉんっ!!



轟音は断続的に続き、炎が赤く燃え上がる。



「……こんな夜中に攻撃呪文だなんて」



リナさんみたいな人って、どこの世界にもいるんだ……。

そんな事を思いつつ、私は騒ぎのあった場所とは逆の方へと歩き出した。

わざわざ事件に巻き込まれるのはゴメンである。

故に私は騒ぎとは反対の方へと足を向けたのだが……。



「───ん?」



木々の向こうからの聞き覚えのある声に、私は思わず振り向いた。

今の声はまさか……。

でも……。

そんなはずはない。

ここは前の時軸とは異なる世界のはずなんだから。

けれど、もしかしたら……。

相反する『まさか』と『でも』。

そんな思いを抱えつつ、私は何かに引き寄せられる様に(きびす)を返していた。

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