瞼を閉じ意識を集中させ、次に目を開けた時には暗闇が広がっていた。
「……は?」
あれ、間違えたかな?
そう思ったのも束の間。
ガクンと体が傾き、私は真っ逆さまに落ち始める。
「ちょ……!?」
眼下に黒い何かが迫り、本能的に腕で顔をかばった。
その瞬間。
ずざざざざざっ!
耳元で木々が風でざわめくような音と共に、体中を襲う痛み。
何が起きているのか分からない中、突然それは終わりを迎えた。
いつの間にか閉じてしまっていた目を開け、辺りを見渡すと、ようやく事態が呑み込めてくる。
「……あぁ、座標軸間違えたのか……」
私は誰にともなく呟いた。
マントが枝に引っ掛かり、木の上で宙ぶらりんと言う形で。
……どうやら出現場所の指定を間違え、空中に放り出されたらしい。
その後、重力に逆らえない私の体は地面に向かって真っ逆さま、と言う訳である。
「……取りあえず」
今はこの状況を何とかしてしまうのが先決だろう。
ちゃんと過去に来れたのかも確認したいし。
そう思って無造作に動いたのがいけなかった。
私の耳にビリっと、布を裂く不吉な音が届いたのだ。
慌ててマントを見やると、重さに耐えられなくなった裂け目が、徐々に広がっているのが見て取れる。
私は咄嗟に浮遊を唱え───そして。
ビリビリビリっ!
どさっ!
「……ったぁ……」
呪文が間に合わず、地面に落下と言う情けない事態に。
反射的に受け身を取ったので、顔面着地と言う事にはならなかったけど。
それにしたって痛すぎる。
「ぅー、ついてない……」
呻きながらも何とか立ち上がり、私は改めて辺りを見渡した。
先程迫って見えた黒いものの正体は森の木々で間違いない。
そして見上げれば生い茂る木の合間から星空が、見下ろせば道と言うにははばかられ、ケモノ道と呼ぶには立派過ぎる道が続いていた。
とにかく今は、ココがどの時間軸で、どんな国であるかを把握する為にも街に向かわなければ。
こんな所で野宿もごめんだし。
私は気の向くまま足を進め───と、次の瞬間。
夜のしじまに爆音が響き渡った。
ちゅどぉぉん!
ずどぉぉんっ!!
轟音は断続的に続き、炎が赤く燃え上がる。
「……こんな夜中に攻撃呪文だなんて」
リナさんみたいな人って、どこの世界にもいるんだ……。
そんな事を思いつつ、私は騒ぎのあった場所とは逆の方へと歩き出した。
わざわざ事件に巻き込まれるのはゴメンである。
故に私は騒ぎとは反対の方へと足を向けたのだが……。
「───ん?」
木々の向こうからの聞き覚えのある声に、私は思わず振り向いた。
今の声はまさか……。
でも……。
そんなはずはない。
ここは前の時軸とは異なる世界のはずなんだから。
けれど、もしかしたら……。
相反する『まさか』と『でも』。
そんな思いを抱えつつ、私は何かに引き寄せられる様に踵を返していた。
ALICE+