「は〜い! 今日もお勤めご苦労さ〜ん」
「ん?」
明るく元気な声をかけるリナさんに、マッチョで覆面の盗賊は訝しげな視線をコチラに投げ付けた。
その目に写ったのはリナさんとガウリイさん。
それにその二人の手によって縄で縛られたアメリアさんと私の姿だろう。
そしてリナさんは段取り通りの演技を始める。
「あたしはさすらいの賞金稼ぎ、リリー!」
「同じくガウリン!」
リナさんは演技を続け、盗賊の一員になりたいと口上して「お頭への謁見を乞う〜」と伝えていた。
微妙に棒読みな事はこの際横に置いておこう。
「この娘はセイルーンの姫。こっちオマケ。おみやーげ、よろしーく」
「あ〜れ〜。お助け〜」
だから棒読みだって……。
まぁ、怪しまれなければ何でも良いのだが……。
それにしても。
オマケはないんじゃないかな……と自己の存在を主張してみたり。
───そして。
リナさんの作戦が功を奏したのか、それともここの盗賊達が間抜けなのか。
どちらにせよ私達は怪しまれる事なくアジトへと潜入し、アメリアさんと二人、無事に牢にたどり着く事が出来た。
無論、全然嬉しくはないのだけれど……。
ガシャンッ!
牢の扉が開けられると共に、私とアメリアさんは縄で縛られたまま、そこへ投げ込まれる。
「あぁっ!!」
「痛っ!!」
いくら人質とは言え、もう少し丁寧に扱って頂きたい。
「あいたたた……」
「……大丈夫ですか? アメリアさん」
「大丈……」
そこまで言って固まる彼女を不審に思い、アメリアさんの視線の先を追ってみる。
すると私達をここへ連れてきた盗賊の一人が、自慢の筋肉を見せ付けるようにポーズを取っていた。
「……こ、恐い」
「…………」
恐怖に呟くアメリアさん。
私はコクコクと頷く事しか出来なかった。
それから、しばし。
「リナさん達うまくやってるかしら?」
「大丈夫ですよ。きっと」
見張りの盗賊が居なくなり、縄を解きながら私達は脱出の機会を窺っていた。
「そろそろ良いですかね?」
「そこそこ時間も経ちましたし、たぶん大丈夫じゃないですか」
「よし! それじゃあ、フレア……」
判断を下し、いざ脱出!
というところに来て、何故かアジト全体の地面が揺れ始めた。
「えっ? 何でぇっ!?」
「アメリアさんっ! 逃げますよっ!!」
「わわっ! 待ってくだ……」
「炎の槍っ!」
崩れ落ちる天井。
間一髪、術が間に合い、牢を壊して巻き添えにならぬ内に走り出す。
耳を澄ませば遠くで聞こえる爆音。
金属の触れ合う音。
「きっとリナさん達の事がバレたんです。急ぎましょう、アメリ……って、あれ?」
その時。
後ろに居るとばかり思っていたアメリアさんの姿が無い事に、初めて気が付いた。
…………えーと?
「まさか逃げ遅れた……とか?」
一抹の不安を抱えつつ。
ふと、彼女がリナさんの仲間だという事を思いだし、私は確信めいたものを得る。
きっと彼女は大丈夫。
あのリナさんと共に行動しているのだ。
これくらいの事でどうにかなるとは考えにくい。
そうと決まればグズグズしている暇はない。
異界黙示録の写本を求めて、私は再び走り出した。
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