「ったく、冗談じゃねぇぜ! 何があんな女チョチョイのチョイだ」
不満をこぼしながら壁に掛けてあったフレームを鷲掴むと、それを高々と掲げて床へと叩きつけ───。
「こうなったらコレだけは意地でも渡さねぇからな」
砕けたガラスの下から取り出した異界黙示録の写本。
それを後生大事に抱え込み、盗賊の頭は追い詰められた者特有の笑みを浮かべた。
───そんな一連の出来事を。
リナさんとゼロス、そして私の三人は隠し部屋の天井裏から覗いていたりする。
「ほ〜らね、やっぱり人間パニックになると必然的に自分の一番大切な物を取りに行くようです」
「ぁあ? だからワザと騒動を起こして、本人にお宝の在りかまで案内させたの!? いけしゃあしゃあとあたしを利用してッ!!」
「……利用? ふむ」
その言葉にゼロスは考える素振りを見せ、そして満面の笑顔で言ってのける。
「そうとも言いますね♪」
…………って、笑顔で言うことじゃないでしょう。
隣ではその物言いに腹を立てたリナさんが天井の高さを忘れて勢い良く立ち上がり、頭を打っていた。
「でも、敵を欺くにはまず味方からと言いますし……」
言いつつ、ピッと立てた人差し指を自分の口に指を乗せた後、「ね♪」と楽しげにリナさんの唇へと押し当てるゼロス。
その行動に彼女は真っ赤になって後退った。
「ねって……誤魔化すなぁっ!!」
「さ、行きましょうか」
怒るリナさんの言葉も、ゼロスは下の様子を見ていて聞いてない。
「人の話を聞かんかいッ!!」
もっともなリナさんの言葉も同じくスルーし、けれど次の瞬間。
「ん……?」とゼロスの眉が顰められた。
「どうかしたんですか?」
「え?」
彼の様子が気になり、つられる様に下を見てみる。
───すると。
「あれは……」
そこに居たのは盗賊の頭と、ゼロスを信用できないと言い、一人写本を探しに出たゼルガディスさんだった。
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