「ちょっと、どうするのよ? これじゃあ例の物が探せないじゃないの」
「どうすると言われましても……」
あたしの言葉にゼロスが困ったようにポリポリと頬を掻いた。
それを見ていたガウリイは、あっけらかんと言ってのける。
「なぁ……ユウに話しちまうってのはどうだ?」
「話してどうするのよ?」
「探すのを手伝ってもらうとか」
名案とでも言うように明るく話す彼にあたしは、はぁ……とため息を吐く。
「あのねー、そう簡単な話じゃないでしょうが」
何てったってあたし達が探しているのはただのお宝ではなく、『異界黙示録の写本』なのだ。
昨日今日会ったような人間に手伝ってもらえる様なものでもなければ、話せるものでもない。
『写本』と言えば、魔道をかじった者なら喉から手が出るほど欲しい伝説の魔道書。
見たところユウも魔道に縁がありそうだし。
第一、こんな突拍子の無い話しをしても、信じて貰えるはずがない。
「かと言って、この教会のどこかに存在しているのかもしれんのに、ジッとしているだけというのもな」
「歯がゆいですよね」
ゼルの言葉にアメリアも続く。
まぁ、ゼルにしてみれば自分の身体を元に戻せるかもしれないと言うのもあって焦ってるんだろうけど。
「じゃあ、仮に正直に話すとして。協力してもらった後はどうするのよ? 自分にも分け前をくれって言われてもどうしようもないわよ?」
こちらにゼロスが居る以上『写本』のその後は決まっている。
即ち───消失。
無くなったものは分け与える事は出来ない。
まぁ、見せる事なら可能だけど。
それにしたってゼロスが黙って人に写本を見せるとは思えない。
そもそも彼が人間であるあたし達に協力しているのだって、『厄介ごとを引き寄せるあたしの側にいた方が色々手っ取り早そう』という、何だかとっても腑に落ちないものだし。
その代わりと言っちゃあ何だけど、中身は見ても良いという条件付きのこの旅。
あたし達にとっては充分美味しい話だけど、中身は見せられない、分け前も無いんじゃあ手伝うのも馬鹿馬鹿しいだろう。
「それは……そうですけど」
「まぁ、良いんじゃないですか? ユウさんはリナさんと違って強欲では無さそうですから」
「ちょっと、どう言う意味よっ!?」
それまで黙っていたゼロスの言葉に、あたしは彼を睨み付ける。
するとゼロスはあたしのそんな視線もどこ吹く風で、意外な事を口にした。
「そのままの意味ですよ。試しに話してみてはいかがですか?」
「へ……良いの? 人間にポンポン『写本』の事を話しちゃって」
「まぁ、好ましいとは言えませんが、ここで悶々としているよりは良いんじゃないですか? それにユウさんに余計な気を使わせて、他の部屋に追いやる事もなくなりますし」
「ぅ゛……人聞きの悪いこと言わないでよ」
「ですが、現にユウさんは僕達に気を使って隣の部屋から出てきませんし」
確かに。
それはそうかもしれないが。
「……まぁここでうじうじしてても仕方ないし、雨も上がりそうもないし……皆はそれで良い?」
「よくわからんが、良いんじゃないか?」
「この際だ、仕方ないだろう」
「はいっ!」
「そう。なら、彼女に話してみましょっ」
ガウリイ達の返事に、あたしはそう答え───。
……ふと気になった事をゼロスに尋ねてみた。
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