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「人間の風上にもおけない悪行の数々! 全てが明るみに出た今、早速その極悪魔道師の退治です!」



突如始まる正義の口上。

柱の上に立ち、ビシッと夜空に突き付けられた指。



「正義があなたを待っている! いざ、戦いの場へっ!!」



元気だなぁ、アメリアさんは。

私のそんな思いをよそに、リナさんはすこぶる上機嫌だった。



「おっちゃーん! ディナーセット5人前追加ね! お勘定はあの子の方で宜しく〜♪」



それを聞いたアメリアさんは心を挫かれたのか、柱の上からズリズリ……っと降りてきた。



「リナさん、もうおしまいにしません?」

「いえいえ! セイルーン王家の御一行が通じる間は、徹底的に利用させてもらいましょう!!」

「あぁ……父さんに殺される……」



先程の魔道師協会で印籠を見せ、タリムさん達に会わせてもらったまでは良かったのだが……。

アメリアさんにとっては、それが悪夢の始まりだったのかもしれない。

その印籠がリナさんの手に渡り……その後の事は言わずもがな。

彼女は印籠を行使し、食べたい放題飲み放題の状態なのだ。

まして相手はあのリナさん。

その量は半端ではなく、もう……お気の毒としか言いようがない。



「それにさぁ、これからの事もゆっくり決めないとね〜」

「返してくださいよぉ! それ」



懐に印籠をしまい込むリナさんに、抗議するアメリアさん。

そんなリナさん達のやり取りをしり目に、ゼルガディスさんは真面目な顔をしていた。



「不死の研究を手掛ける魔道師の黒幕か……」

「うん……魔獣が現れた時から厄介そうだとは思ってたけど、いよいよ本格的だわね……こうなったら」

「こうなったら?」

「あたし降りちゃおっかな〜」



言ってリナさんは後ろ頭で手を組み、椅子に寄り掛かった。

隣では正義の鉄槌を下せなくなるとアメリアさんが絶叫しているが、私にとってはまたとないチャンス。



「だってぇ、不死の研究に人体実験までやってた魔道師なんて、好き好んで付き合う相手じゃないわよ……それにあの魔獣。今回の事件、どうも嫌な予感がするのよねぇ」

「そうですね。わざわざ危険を冒して怪我でもしたら大変ですし」

「でしょ?」

「はい。誰に頼まれた訳でもないですし、報酬が出る訳でもないですし」

「そうよねー」

「そうですよ」



けれど、そんな私の思惑はゼルガディスさんの一言によって、一瞬で危ういものになってしまった。



「しかし、そうなると今回の依頼料、破格の報酬はパァって事になるな」

「あぁっ!? そうだ……」

「あの魔獣を倒したのも全部タダ」

「……タダ……」



まずい……このままじゃ、どんどん面倒事がやってくる。

むしろ取り次ぎ無しで、すぐそこまで来ている勢いだ。

何とかしなければ……。

けれど、それより先にアメリアさんがダメ押しをした。



「そうですね。タリムさんデイミアさんが牢の中じゃ……」

「……タダ」

「り、リナさ……」

「そうは行かないわっ!!」



私の呼び掛けも虚しく、リナさんはグサッ!とチキンにフォークを突き付ける。



「何がどうあろうと依頼料が貰えないのは困るっ!! 『タダ働き』そんな言葉、あたしの中に流れている商売人の血が、絶っ対許さなーーーいっ!!」



この時、私の運命は確定した。



こんにちは、面倒事。

さよなら、私の平穏な日々……。



隣で騒ぐリナさん達に、そんな私の独白は、聞こえるはずもなかった。

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