「ふっはっはっはっ! 嬉しいですね。その魔力の強さ」
魔法を直撃したにも関わらず、楽しそうに笑うハルシフォム。
それに対し、リナさんは嫌味たっぷりに言い放った。
「ふっ、魔獣を召喚するだけあって、ちょっとはやるみたいね」
「おや、気付きませんでしたか? あの魔獣を呼び出したのが、わたしではない事に。残念ながらわたしは召喚魔術は使えないものでね」
『えっ!?』
驚く私達に、彼は気にする事なく続ける。
「紹介しておきましょう。魔獣はね、彼に呼び出すように依頼したんですよ」
その言葉と共に、誰も居なかったはずの空間に仮面をつけた黒いマント姿の者が現れた。
「セイグラム。わたしの計画の良きパートナーです」
「セイグラム?」
リナさんがその名を反芻し……次の瞬間。
私達の後ろからいきなり火の矢が放たれた。
その犯人はアメリアさん。
彼女はビシィッ!と指を差すと、声高らかに言ってのけた。
「応援を呼ぶとは卑怯なっ!! 正義の怒り、見せてあげるッ!!」
……って、それは良いのだが、5対2の方が卑怯なのでは?
そう思う内にも火の矢は突き進み、ハルシフォムの時と全く同じ道をたどる。
「あれぇっ!?」
「……嫌な予感的中ね。魔獣を召喚できるのは腕の立つ魔道師か、魔族!」
「えぇっ!? アレが魔族? それを早く言ってくれないと……」
「言ってる暇なんて無かったでしょうが!」
愚痴るアメリアさんにそう答え、その後リナさんはクルリと背を向け歩き出した。
「とにかくあたしは話が違いすぎるから帰る」
「賛成です」
頷き、それに続く私。
けれど、逃亡は敢えなく失敗してしまった。
ガウリイさんに、リナさんもろともローブのフード部分を掴まれて。
「おい、こらリナ! ユウ!」
「だ、だってぇ」
「わざわざ面倒事に首を突っ込まなくても……」
「それにこんなめっちゃタフな奴と魔族相手に、あんな程度の報酬じゃあ……」
「……ん?」
マントの襟首掴まれてるリナさんと一緒に不満を吐き出し───ふと、彼女の言葉に何かが引っ掛かった。
「タフな魔道師と魔族?」
「不死の研究をしていたタフな魔道師と、魔族……」
「その取り合わせって……」
「……まさか」
静かに佇むハルシフォムを見れば、余裕の笑みを浮かべている。
その言葉を肯定するように。
「おや、ご存知でしたか。あの契約のこと」
………やはり。
どうしてもっと早く気付かなかったのか。
自分の屋敷内でアレだけ派手な立ち回りをしていたというのに。
尚かつ、おかしいと思っていたのに。
嫌な予感もしてたのに。
どうして大事になる前に逃げなかったのか。
…………いや、今ならまだ間に合うかもしれない。
「契約って何の?」
「魔族との、不死の契約よ」
「えぇっ!?」
「えっ? 何だ何だ?」
驚くアメリアさんに、事態を理解していないガウリイさん。
そしてハルシフォムが動き出す。
「知っているのなら話は早い。大人しく捕まって頂きます。なぁに、直ぐ楽にして差し上げますよ」
彼の突きだした手のひらには何度目とも知れぬ光が集まりだした。
…………今だ。
この騒ぎに乗じて逃げ出そう。
異界黙示録探し云々より、まずは身の安全である。
「ここは一先ず……逃げるわよっ!!」
「えっ? お、オイッ!?」
リナさんの号令にその場を退く私達。
私はリナさん達とも、ゼルガディスさん達とも違う方向へと駆け出し、
「コッチだ、ユウっ!!」
…………って、えっ!?
一人で行動するのは危ないと思ってくれたのか、ゼルガディスさんに腕を掴まれ半ば引きずっていかれる。
「あの、ちょっ……待っ!?」
───そして。
「嘘ーーーーっ!?」
そんな叫びも虚しく、私は無事、彼に保護された。
そう、またもや私は逃亡に失敗したのだ。
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