「ハルシフォム、栄えある餌食になってあげるわ!」
「覚悟を決めましたか」
「リナッ!?」
「待ってください、ガウリイさん」
リナさんの突然の行動を止めさせようと、立ち上がりかけるガウリイさん。
それを私は手で制止した。
「ユウっ!?」
「大丈夫です……リナさんには何か考えがあるんですよ」
「けど……!!」
「しっ……」
人差し指を唇にのせ、ガウリイさんに声のトーンを抑えるように注意して、私はわざと明るい調子で答える。
もちろん声は潜めながら。
「大丈夫ですよ。大体、リナさんがタダで殺られる訳ないじゃないですか……ね?」
言う内にもリナさんの周りに力が流れ始めている。
油断しきっているハルシフォムには聞き取れぬ程の、小さな小さな囁き。
混沌の言語……カオス・ワーズ。
───優しき流れ
たゆとう水よ───……
やがてそれは大きくなり。
「全ての者に白い息吹を! 氷窟蔦っ!!」
ハルシフォムが気付いた時には既にリナさんが術を放っていた。
たんっ!と床に手をついたリナさんの手を起点に、氷のツタが床を這い回り、ハルシフォムを氷の檻へと閉じ込める。
「やったな! リナッ!!」
「……何とか成功したわね」
その様子を見て、私はホッと息を吐いた。
そして、気付く。
ずっと傍らに居たセイグラムが手出しもせずに佇んでいることに。
……契約者と言っても、護衛とかはしないのだろうか?
そんな事を思いながらセイグラムの方を見ると、一瞬目が合い、そして次の瞬間には、ふいっと視線を外されてしまった。
……まぁ、見つめ合っていたい相手って訳じゃないから構わないけど。
ボケた事を考えつつ、私はリナさんの言葉に耳を傾ける。
「しばらく時間は稼げる……今の内に!」
「逃げる?」
「無駄よ! この街を出る前に奴があの氷から抜け出して、追い付いちゃうわ」
「……それは的確な判断ですね」
けれど彼女のその意見に、同意したのは私達ではなかった。
毎度毎度、一体いつの間に現れるのか……。
それは黒衣の神官、謎の人物、その人だった。
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