「痛いです……」
わざとらしく痛がるゼロスに、私はジトんとした視線を投げ掛ける。
「自業自得です」
「一応、僕、窮地を救ったと思うんですが」
「それとこれは別問題です」
彼の言葉に、私は断固たる意思で言い切った。
アレの名前を言うだなんて、私にとって嫌がらせ以外の何ものでもない。
攻撃呪文が飛び出さなかっただけ感謝してもらいたいくらいだ。
「それにしてもユウさんがク……あ……いえ、アレが苦手とは……」
「足がないのと6本以上ある虫が嫌いなんです」
「足が無いってナメクジは大丈夫だったじゃないですか」
「あれは虫じゃないですもん」
「確かにあれは貝の一種で、虫とは違いますが……」
私の言い分に何やら納得いかなさそうな顔をしているゼロス。
が、ダメなものはダメ、大丈夫なものは大丈夫なのだから仕方ない。
「しかし、そんな状態で良く野宿が出来ますねぇ?」
「言わないで。結界張るのも結構大変なんだから」
「………………」
言って項垂れる私に呆れたような視線が突き刺さる。
それに気付いて、いたたまれなくなった私は誤魔化すように話題を変えた。
「それより、ナメクジ云々を知ってるって事は、そのくだりから黙って見てたって事?」
「正確にはその前からです♪」
「…………」
あぁ、そうですか。
その一言に、今度は私が呆れる番だった。
「……それじゃあ、アメリアさんとゼルガディスさんは?」
「さぁ?」
「……さぁって、助けてくれたんじゃないの?」
「いえ、特に助けようと思った訳じゃ……あのまま捕まってしまわれたら面白く無いですから」
…………それはつまり。
「……要するに暇だったのね?」
「暇って……こう見えても僕、結構忙しいんですよ?」
「じゃあサボりか……」
「…………」
私の的確な呟きは聞こえなかったフリをして、ゼロスは頬を掻きながら部屋の一角にあるテーブルへと誘う。
「ま……まぁ、折角ですし、お茶でもいかがです?」
「そうね。取り敢えず状況も知りたいし、お言葉に甘えようか。ゼロスの不真面目さを言及してても始まらないし」
「…………」
その発言に、ゼロスの笑みは苦々しいものへと変わっていた。
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