「さて、そろそろ頃合いですかね」
そうゼロスが切り出したのは二杯めの香茶を飲み終わった頃。
彼は椅子から立ち上がると、私へと手を差し出した。
その手を取り立ち上がると目を瞑る様に言われ───次に目を開けた時には事態は終盤へと差し掛かっていた。
いつの間にか広い研究室の様な場所にいた私は彼を見ながら言う。
「ゼロスって手品師みたいね」
「くす……種も仕掛けもありませんが」
前方にはリナさんの姿。
そしてアメリアさんとゼルガディスさんの姿もある。
どうやら二人は無事だったらしい。
その事に、私はそっと息を吐いた。
それから顔を上げ、事の成り行きを静かに見守る。
リナさん達の更に奥にあるクリスタルの水槽。
その中から出てきた赤い髪の女の人と、その人を力強く抱き締めるハルシフォムの行く末を。
「ルビア……よく帰ってきてくれた」
ハルシフォムの呼び掛けに、けれどルビアと呼ばれた彼女は答えない。
否、答えられないのだ。
「……あれじゃあ操り人形よ」
生体エネルギーで動かされているだけの彼女を見て、リナさんが悲痛な想いを吐き出すように呟く。
私はそっと、隣に居るゼロスを見上げた。
彼は最初から全て知っていたのだろう。
それが完璧な甦生ではない事を。
仮初めの命、まやかしである事を。
知っていながら、先程から笑みを絶やさず佇んでいるのだ。
私とは……私達とは一線を画する存在。
私はそれに気付かなかったフリをして、再び彼等へと視線を戻した。
───すると。
操り人形と化した彼女の瞳からは、一筋の涙が流れていた。
それは彼女に残る最後の意思。
そして最後の言葉。
私達の中に、何とも言い様の無い虚しさが満ちていった。
あとがき
『こ・ろ・し・て』
それは彼女の最後の言葉───……後言。
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