「……ユウさんがお疲れの様でしたので、睡眠を提供しようかと思いまして」
「……すい、みん?」
「はい♪」
……………。
笑顔で返事をするゼロスに拍子抜けし、私は掴んでいた彼の襟元からそっと手を放して項垂れた。
睡眠て……。
やっぱりゼロスってよくわからない……。
はぁ、と溜め息を吐き、私はストンと腰を下ろす。
「確かに少し疲れてますけど、旅をしてれば当たり前ですし、それはリナさん達だって……」
「眠れていないのでしょう?」
リナさん達だって疲れているのは一緒。
そう言いたかったのに。
ゼロスの一言に顔を上げ、開かれた瞳を目の当たりにしてしまえば、それ以上の反論は失われてしまった。
代わりについて出たのは、「どうして?」という疑問。
「…………どうして知ってるの?」
最近眠れていない事に。
「どうしてだと思います?」
からかう様な声音に、その笑顔に。
楽しんでいるのが見てとれる。
でも、その瞳は真剣さを帯びていて。
「もしかしてゼロス……私の事……」
そんな訳無い。
そう思いつつ、完全には否定出来なくて。
私はチラリと窺う様に、彼を見る。
未だ真っ直ぐに注がれている視線にドキリとしながら、それでも私は真相を確かめる為に意を決して口を開いた。
「ゼロス」
「はい?」
「ゼロスは……その、私の事……。
ストーカーしてたんですか?」
ずべしゃっ!
「ちょ、いきなり何をっ!?」
後ろに木があるせいで器用に横に倒れながら、ゼロスは慌てふためく。
対して私は冷静に告げた。
「だって私の様子を知ってるなんてストーカーとしか思えないじゃないですか」
「いや、それは……」
「図星ですか」
「見かけたんですよ! 数回、ユウさんが夜中に一人でぼんやり夜空を見上げているのをっ!」
「…………あぁ、なるほど」
「納得していただけましたか?」
よろよろと体勢を立て直すゼロスにコクンと頷く。
しかし直ぐに次の疑問が浮かび、私はその質問を投げ掛けた。
「ところで、そんな時間にゼロスは外で何をしていたんです?」
「……ぅ。そ、それは……」
言葉を詰まらせ、明らかに慌てている様子のゼロスに、私は肩を竦める。
「まぁ、良いですけど。あんまり周りに迷惑はかけないで下さいね」
「……一体僕の事を何だと……」
「謎の神官……と言うより、怪しい神官、かな」
「酷いですねぇ……」
ぼやく彼を見ながら微笑し、私は一つあくびをかみ殺した。
ゼロスの腕の中に居る内に、段々眠くなってきてしまったのだ。
…………まぁ、いいか。
私は意を決すると、そのまま横になった。
睡眠を提供してくれると言っていたゼロスの膝に頭を乗せて。
「……ユウ、さん?」
「折角だから借りるね」
「……は、い」
彼が何を考えているのかは想像もつかないけど、考えていたって仕方がない。
分からないものは分からないのだ。
それよりも今は、甘やかしてくれると言うのならそれに乗っかってしまおう。
居心地の良い、この場所で。
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