「ゼロスが、精神世界から直接アイツに攻撃をしている、んだと思うわ」
「あすとら……?」
「つまり、あたし達には入り込めない二人だけの世界にイッちゃって、そこで戦ってるって事よ!」
「そ、そうか。よくわかった」
ったく、キンチョー感のカケラもない。
再び視線を二人に向けると、既にフラつき、まともに立つことすら出来ない『ユウ』が、
短刀を振りかぶり、ゼロスに走り込んでいた。
「ゼロスっ!!」
思わず、叫ぶ。
ゼロスは避けず、短刀はずぶりとその体に飲み込まれた。
ニヤリと笑う『ユウ』を……
ゼロスは優しく抱きしめた。
それはそれは、愛しげに。
「これで、この体を傷つける事は出来ませんね」
「なっ!? 貴様、ワザとっ!?」
『ユウ』が短刀を引いても、ゼロスの体から刃は抜けず、
かといって短刀を手放す事は、そのままユウの体を手放す事となるのだろう。
身動きが取れなくなり、もがいている『ユウ』を、
ゼロスはキツく抱き締めた。
まるで、ユウに縋りつくように。
「や、めろっ……放せぇぇぇっ!!」
「お断りします」
「何故だっ!? 魔族ならば、存在の仕方は我らとの方が近いはず…何故、人間などに味方するっ!?」
「……一緒にしないでくれますか?」
ゼロスは少し体を離すと、『ユウ』の顎に指先を絡めその視線を自分へと向けた。
「僕達、魔族は根底から人間とは異なるモノ。対してあなたは、たかが人間の残留思念に過ぎないじゃないですか」
「な、んだと…?」
「精神世界に実体を置く僕たちとは違い、あなたには実体化する力がないだけ。そんな存在と一緒にされるとは、心外を通り越して……」
言葉の内容とは裏腹に、にっこりと微笑みゼロスは告げた。
「……不愉快ですね」
刹那、
「があぁぁぁぁぁっ!!!!」
ヤツが断末魔の叫びを上げた。
「……ゼ、ロス……」
ユウの体は、ゼロスの腕の中で力を失い動かない。
あたしは本能的に何かを感じ、喉の奥がカラカラに渇いていた。
そんなあたしに気付いているのかいないのか。
ゼロスは、
「負の感情を源とする呪いも、ここまで自我が育ってしまったら美味しく頂く事も出来ませんからねぇ」
のほほんと、そう口にしたのだった。
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