嫌でも高まる緊張感の中、
あたしの隣ではゼルが烈閃槍を唱えている。
肉体を傷つけず、ユウの中にいる『ヤツ』だけに攻撃を仕掛けるつもりなのだろう。
が、
気付いた『ユウ』は余裕の笑みをゼルに向けた。
「いいのか? 今は眠っているとは言え、コイツの精神はここにある。そんなモノを食らえば、ダメージを受けるのはコイツの方だ」
「何だと!?」
ゼルは呪文を中断し、悔しそうに『ユウ』を睨みつけた。
「リナさん……どうしましょう?」
「どうしましょう、たって……」
アメリアの問い掛けに、あたしも困惑でしか答えられなかった。
ユウの体を傷つけない事が大前提。
かといって精神に直接ダメージを与える術もダメだと言われたら、
はっきり言って、あたし達には手の出しようがない。
ヤツの言うことが本当かどうかはわからないが、
否定する材料がない以上、試してみるのはあまりにも危険である。
「…仕方ないわね。とりあえず、一旦逃げて…」
「逃がすと思うか?」
…対策を考えよう。
そう続けようとしたあたしの声は、『ユウ』によって遮られた。
そして、彼女の手にした短刀がピタリとその頬に押し付けられる。
「なっ!?」
「逃げるがいい。この女の顔に、一生消えない傷が残っていいのなら、な」
そう言ってニヤリと笑う『ユウ』を前に、
あたし達は完全に身動きが取れなくなってしまった。
くそう。
悔しいが、コイツは人質の上手い使い方を知っている。
ユウの命を断ってしまったら、ヤツ自身も動けなくなるが、
顔に傷をつけるだけなら、痛くも痒くもないだろう。
だが、こちらとしては命と同じくらい女の顔は大事な訳で、
動きを封じるには効果は絶大である。
「なんて悪趣味なヤツなのっ!? さてはアンタ、『なんか怖い』とか『生理的に無理』とか言われてフラれるタイプでしょう!?」
「やかましいっ!!」
あ、図星っぽい。
とりあえず悔しまぎれに軽口を叩いてみたものの、事態は何も変わらない。
クツクツと喉を鳴らしながら、『ユウ』は空いている手のひらをこちらに向けた。
攻撃が来る!
ギュッと体を強ばらせ、身構えるあたし達。
するとそれを遮るように、黒い影が進み出た。
それは……
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