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「要はそこいらの盗人(ぬすっと)が金目当てに金持ちの高級ペットを盗んだって、ケチな話でしょう? んなもん子供でも推理できるわ」

「そうなのか」



誘拐の捜査の為に店の外へと場所を移し、街中を歩きながら話をまとめていると、ガウリイさんが不思議そうにゼルガディスさんに問いかけた。

そんな彼に呆れを滲ませながら「お前は考えなくていい」と切り捨てるゼルガディスさん。

何と言うか扱いが雑なような気もするが、逐一説明するのも面倒なので放っておくことにする。



「取りあえず情報収集ですね」

「うっしゃー! まずは捜査のいろはから、聞き込み開始ーっ! 行くよ、おっちゃん!」

「うぉっ!?」



先程まで負けた食事代の支払いでご機嫌斜めだったのだが、気持ちを切り替えたのか手錠で繋がれたワイザーさんを引っ張り、颯爽と歩みを進めるリナさん。

対して突然強く引かれたワイザーさんはたたらを踏み、頭から地面に突っ込むことになった。

が、それも束の間。

直ぐに体勢を立て直すと手錠を引き寄せ、リナさんを引き止める。



「このっ! 愚かな推理を展開し、捜査を攪乱しようとしてもこの私の目は誤魔化せんぞ」

「何をぉっ」

「ふははは」



互いに鎖を引っ張り、火花を散らす二人。

このままだといつまで経っても話が進まないので、取りあえず二人を落ち着かせてから情報収集を開始した───のだが。



「知らないねぇ、他を当たってくれ」

「知らないわよ。他当たって頂戴」

「知らないったら知らないよっ」



誘拐事件について聞いた途端、知らないという言葉と共にドアを閉められ、窓を閉められた。

更にはその様子を見ていた他の家の人達までもが締め出す始末。

私達はあっけにとられ、その場に立ち尽くしてしまった。



「まるで何もしゃべるなって誰かから命令されているみたい」

「みたいじゃないわね」

「え? それじゃあ」

「何者かの圧力か」



皆が皆、知らないというあまりにも不自然過ぎる対応に、どこかから箝口令(かんこうれい)がしかれたと考えた方が自然だろう。

取りあえず、今回の犯人は一般市民全員に強い働きをかけれる人物という事で間違いなさそうである。



「となると、怪しいのはある程度権力を持った人物ですかね?」

「そうね。で、その辺りはどうなの? 当然何か掴んでるんでしょう?」

「その辺りとは?」

「だからぁ、町の住人に脅しをかけるような人間が……って、もしかしてアンタ、今まで聞き込みとかしてなかったのっ!?」

「当たり前だ。私は無駄な捜査はしない。何故なら、特別捜査官としての勘が真犯人はリナ=インバースだと告げているからだ」



しらばっくれているだけかと思いきや、ワイザーさんはつんとそっぽを向きながら自信満々に答えた。

えーと、この人本当に解決する気があるのだろうか?

唖然としつつも、そんな疑問を抱いていると、リナさんがポツリと呟いた。



「犯人捕まえたら絶対消しちゃる。この無能捜査官」

「捜査官ではない。特務捜査官(インスペクター)だ」

「突っ込むとこかなっ!?」



無能と言われた事より捜査官と言う呼び名を気にする彼に、期待するだけ無駄な気がしてきた。

と、その時。



「ん? 何だありゃ?」



今まで会話に参加していなかったガウリイさんが不思議そうな声を上げ、私達は彼に注目した。

すると、



「あれ」



ガウリイさんの指さす先に何かの足跡。



「消えたペットの足跡……にしては怪しすぎるわね」



その足跡を追ってみると、街を外れ、湖のある場所へと続いていた。

そしてその湖の真ん中には───。



「……島か」

「そう言えば町の人が言ってました。ここ最近湖を渡る船が行方不明になる事件が続いてるって」

「湖の周りではペットの失踪。謎の足跡。それと人を寄せ付けない孤島か……ちょっと、流石に湖の捜査はしたんでしょうね?」

「ふん、何を無駄な事を。する訳がなかろう、何故なら……」

「威張るなっつのーっ!」



リナさんの放った怒りの蹴りがワイザーさんを吹き飛ばし───



「どわぁぁぁぁぁっ!?」

「……学習しろよ」



鎖に引っ張られ一緒に吹き飛んだリナさんを見て、私達は深いため息を吐いたのだった。












あとがき

捜索。
探し求めるのは犯人よりも、有能な捜査官。

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