「さぁて、どんなお出迎えがあるのかしら?」
一人の尊い犠牲により何とか小島へ上陸した私達が前方を見据えると、そこにはいくつもの赤い光と、膨れ上がる殺気が立ち込めていた。
ぐるるるる、と獣にも似た咆哮を上げ、こちらに迫りくるレッサー・デーモンの群れ。
「早速のお出ましね」
「レッサー・デーモン?」
「どうしてこんな所に?」
普通、レッサー・デーモンというのは術者が異世界より召喚する物なのだが、それがこの小島に多数存在するという事は……。
「どうやら誘拐犯の番犬らしいわね。さっきの化け物クラゲ同様」
「何だと?」
言う内にもデーモン達は私達を取り囲み始めていた。
主な攻撃が火の矢と肉弾戦という、亜魔族の中でも下位の存在ではあるものの、流石にこの数は少しばかり骨が折れそうである。
なるべく少ない労力でやり過ごす手段は無い物か───そんな考えが頭をかすめたその時。
辺りに響く、朗々たる声。
「あなた達! この世に悪の栄えた例はありません! 今こそ正義の鉄槌をっ!」
びしぃっ!と指をさし正義の口上を述べたのは、言わずと知れたアメリアさん。
それを見て、リナさんは即座に走り出した。
「じゃ、そゆ事で!」
「え?」
「後は宜しくーっ!」
「お願いしますっ」
ワイザーさんを引きずりながら手を振りその場を離れるリナさんに続き、これ幸いと私もその場を後にする。
「え、あ、ちょっと、リナさんっ!? ユウさんっ!?」
後ろからかかる制止の声を涙を呑んで聞こえなかった事にし、私達は島の中央を目指し突き進んだ。
その最中にも少なくない数のレッサー・デーモンが、こちらに向かって襲い来たのだが、徒党さえ組まれなければ、はっきり言って物の数ではない。
「地撃衝雷っ!」
「青魔裂弾波!」
取りあえず近くに居たデーモンを無に帰すと、それまで引きずられるように走っていたワイザーさんが次々に襲い来る敵を見て驚きの声を上げる。
「一体ここは何なのだ?」
「その内わかるわ。あたしの勘が当たってたらね」
言って再び走り出したその先に、薄ぼんやりと浮き上がってきたシルエット。
「こ、これは……?」
「ふふん、ビンゴっ!」
そこには少しばかり寂れた塔が佇んでいた。
リナさんは不敵な笑みを浮かべると塔に近づき、当然の様に振動弾で壁を壊して中へと侵入する。
それに戸惑いながらもついて行くワイザーさん。
更に私も続き通路をひた走っていると、そこにも代わり映えのしないお出迎えが待っていた。
それを苦も無く倒していくリナさん。
「烈閃槍! 烈閃槍っ! もひとつ烈閃槍っ! もいっちょーっ!」
先行するリナさんが片付けてくれるお陰で随分と楽ではあるのだが、何分走り通しで息が上がりつつある私は、膝に手を当て立ち止まった。
いやはや、前々から感じてはいたけど、彼女達の体力はどうなっているのだろうか?
そんな事を思っていると、敵の出現が一段落ついたタイミングで立ち止まったリナさんが、隣に居るワイザーさんへと声を掛けた。
「どう? これで事情が分かったでしょ?」
侵入者を拒むように、次から次へと必要以上に現れるデーモンの数々。
街での箝口令。
そして誘拐されたペット達。
これではここで動物を使った悪さをしていますと宣伝しているようなものである。
「うむ、まだ我が目を信じられん」
「でしょうね。あたしだって……」
「リナ=インバースは世界征服を企む悪のシンジケートのボスであったとは!」
ずべっ。
「この様な施設を用意したのも、世界中を手中に収める為に他あるまい。どうだ、私の目に狂いはなかろう? ふっはははははっ!」
あまりにもあんまりな、狂いまくった節穴の目で、リナさんがずっこけたのも気にせず、高笑いする特務捜査官さん。
この国、こんな人が捜査官で大丈夫なんだろうか?
そう思う内にも、そのずれまくった指摘に、ついにリナさんが切れた。
ワイザーさんへと繋がっている手錠の鎖を手に取ると、自分を軸にぐるぐると回転させ、
「でえぇいっ! いい加減その無能な脳みそ、ちったぁ回転させなさーいっ!」
「もう回転してるーっ!」
次の瞬間。
リナさんの腕から手錠がすっぽ抜け、遠心力で勢いのついたワイザーさんは吹き飛んだ。
そしてそのまま近くにあった扉へと激突し、その衝撃で扉に穴が開いてしまったのだが……。
その先の部屋に設置されたある物を見て、私とリナさんは顔を見合せた。
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