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「さぁ、元気に参りましょう! 魔道戦車の探索です!」



拳を振り上げ、元気いっぱいに宣言して歩くアメリアさん。

その後ろを、やる気なさそうに浮遊レビテーションでついて行くポコタさんと、これまたやる気なさそうに歩くゼルガディスさん。

その様子を更に後ろから見ながら、私は小さく息を吐いた。

誰一人として正義の使者に逆らう事ができず、情報集めのために下山と相成ったのだが……。

つい先程まで命のやり取りをしていたばかりなので、ゼルガディスさんとポコタさんの仲が良いはずも無く、けれどアメリアさんは露程もそれを気にしてはいない。

と言うよりも、今は魔道戦車の事しか頭にないのだろう。

まぁ仲は良くないとは言え、お互いに突っかかる事も無く、無関心を決め込んでいるので、ゼロスとゼルガディスさんが会ったばかりの頃よりは幾分か平和である。



「………………」



───と、そこまで考え、ふと苦笑した。

だいぶ頭が冷えたのだろう。

()の事を思い出しても、モヤモヤした気持ちは沸き上がらなかったのだ。

かと言って、じゃあ彼に会っても大丈夫かと言われれば、それはそれで面白くないと思ってしまうあたり私もまた素直じゃないのだろう。

私は再度溜息を吐くと、今はまだ考えない様にしようと頭を軽く振り思考を追い出す。

そうして私は、歩くことに集中した。

ただ黙々と───。













「ちっ、いい気なもんだな。すっかり寛いでやがる」



アメリアさんの頭の上ですやすやと眠るポコタさんを、ゼルガディスさんは忌々し気に見やった後にそう呟いた。

辺りはすっかり夕焼け色に染まり、先程到着した村も例外ではなく、屋根や壁が赤く色づいている。

今日はこの村で情報を集めたら、そのまま一泊する流れになるだろう。

久しぶりにベッドで眠れそうである。



「まぁ良いじゃないですか。それだけ、わたし達に心を許している証拠です」

「だと良いがな。どうもうまい事使われてる気がする」



顔をしかめるゼルガディスさんだったが、そう思ってしまうのも頷ける。

と言うのもここへ来る途中、近くにあった川で魚を釣り、お昼休憩となったのだけれど。

そこでポコタさんはかなりの数の魚を平らげた。

それはもうリナさん並みに。

遠慮なく。ペロリと。

「悪ぃな」と言ったその先に、「おかわりまだ?」との催促。

魚を釣っていたゼルガディスさんの即席釣竿がミシリ、と音を立てた───という事があったのだ。

ゼルガディスさんにしてみれば面白くはないだろう。

そんな彼を(ねぎら)うべきか否かと思考を巡らした、その直後───

どごぉんっ!

突如響いた爆発音と爆風に、私は慌てて腕を目の前にかざし、それらをやり過ごす。

一体全体、こんな小さな村の中で何が起きたのか。

徐々に土煙が晴れたその先、そこにあったのは───



「こ、これはっ!?」

「えーと?」

「なんだ?」



それは何とも形容しがたい、大きな塊だった。

白い大きな塊から上に飛び出した二本の板と、下に飛び出した一本の車輪。

その塊の正面には黄色と茶色の歪なマークが取り付けられている。

そんな何とも言えない塊が、破壊した家を背に悠然と佇んでいるのだが……。

それをまじまじと見ながら、首を傾げる私とゼルガディスさん。

対してアメリアさんは拳を握りしめると、力説し始める。



「何って、魔道戦車ですよ! 魔道戦車っ! 正義を志す心が、わたし達を導いてくれたんですっ!」

「魔道戦車っ! へっ、ここで会ったが百年目っ! ぎったぎたにぶっ潰してやる!」



先程の騒動で目を覚ましていたポコタさんは、言って私達から逃げる様に移動し始めた魔道戦車?を空から追いかける。



「あ、待って下さい! わたしも行きます!」



アメリアさんもそれに続き───私とゼルガディスさんはその様子を呆然と眺める事しかできなかった。



「あれが魔道戦車? こんな村で……」

「軍事力とは無縁そうですけど……」

「そもそもあんな玩具の様な出来の魔道戦車があるのか?」



アメリアさん達が追いかけて行った方向を眺めながら、うーん?と首を捻る。

確かに以前見た魔道戦車に比べ、バランスが悪いように思う。

まぁ、魔道戦車ってそれぞれが生き物の形を模しているみたいだったので、そう考えると形状から言ってウサギ……に見えなくもない?のかなぁ?



「まぁ、取りあえず、成り行きを見渡せる場所に移動しましょう、か?」

「そうだな」



このままここに居ても手持無沙汰だし、かと言ってこれ以上訳の分からない騒動に巻き込まれたくはないので妥当な判断であろう。

高台へと移動した私達は、眼下で繰り広げられる攻防を見やった。

魔道戦車らしき物は次々に家を破壊しているようで、あちこちから土煙が上がっている。

更にはアメリアさん達も結構激しめの攻撃呪文を繰り広げており、少し離れたこの場所にも爆音が響き渡った。



「ん? 防御結界張ってますよ、あの魔道戦車」



並大抵の魔法は効かない筈じゃあ?

不思議に思うものの、アメリアさん達の魔法を防いだ魔道戦車は進路を変え、逃げに転じる。

今までの魔道戦車に比べると、随分と小回りが利くようだ。



「それにしてもアメリアさんもポコタさんも元気ですねぇ」



縦横無尽に飛び回る二人を見ながら呟けば、ゼルガディスさんが「あぁ」と相槌を打ってくれる。

ポコタさんはアメリアさんの頭で休んではいたけれど、下山してからこちら、休憩らしき休憩をしていないのに動き回れるその体力は一体どこにあるのだろうか?

やはり食事の量が関係しているのか───と考え、ふと思い出す。



「そう言えばゼルガディスさん」

「何だ?」

竜破斬(ドラグ・スレイブ)使いが意地汚くて大食いというのは聞き捨てなりませんよ?」

「は?」



隣を見上げながら不満を隠さず言えば、彼は何のことか分からないというような顔をした。

けれどそれも数瞬の事で、その後思い当たってくれたのか、「あぁ、あれは……だな」と口ごもる。



「私、そんなにガツガツしているように見えます?」

「いや、すまん。そういうつもりで言った訳じゃない」

「ふふっ、分かっていただけたのなら何よりです」

「お前さんは食欲より睡眠欲だったな」

「………………」



その一言に、笑みを浮かべた私の顔が固まる。

そんな人を惰眠を貪る人間みたいに……。

そもそも私が睡眠を欲するのは、この時間軸に来るのに大量の魔力を消費したからで、それを補うために……。

と、内心反論し、それってつまりは食欲より睡眠と言うゼルガディスさんの言葉が正しいと証明しているようなものだった。

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