お互いに固まる事、数秒。
「はぁい♪」
居たたまれなさから片手を上げておちゃらけて見せた私に、けれどゼロスは尚もこちらを凝視し続けた。
……き、気まずい。
もう、こうなりゃ自棄だ。
居心地の悪さを晴らすべく、私は目の前にある両頬を摘まみあげた。
「な、ユウひゃんっ!?」
「はーい、ユウさんですよー」
投げやりに答えながらゼロスの頬を左右に引っ張り、にこり、と微笑む。
そりゃあね、前来た時はお別れの挨拶も無しに帰ってしまったし、そうかと思えばいきなりの再会で驚くなと言う方が無理かもしれないけど。
声を掛けたんだから、返事くらいしてくれても良いじゃない。
大体、神出鬼没はお互い様だって言うのに。
そんな悶々とした思考は芋づる式に先日の事を思い出させ、更に指に力がこもった。
散々人を振り回しておいて、そんな事全然知りませんって顔で現れて……。
───と、そこまで考え、ふと思う。
ゼロスは本当に知らないんだと。
そもそも振り回したのは未来の彼だ。
目の前の彼にそれを省みろと言うのは土台無理な話で……。
というかゼロスにしてみれば、いきなり居なくなって、いきなり現れたかと思えば両の頬を引っ張るという暴挙に出る私こそ省みるべきだ。
その事に気付いた私は多少の罪悪感から、おずおずと手を離すと、ついと視線をそらした。
「………………」
未だ無言のゼロスに何と言うべきか。
かと言って、ここまでやっておいて謝るのも今更すぎる。
気まずさから、ちらり、と窺い見れば未だ混乱状態のゼロスの姿。
私は再び視線をそらすと、考えも纏まらぬままに口を開き、
「えーと、その、ただい、ま?」
後悔した。
ただいまってなんだ。
もとより私は未来の人間だ。
そこはリナさん達と再会した時の様に「久しぶり」で良かったではないか。
これではまるで───
「〜〜〜っ」
突如湧き出た何とも言えない感情に顔ごと背けたい衝動に駆られるが、それを誤魔化すように至って冷静に、けれど視線はそらしたまま「久しぶりね」と言い直した。
なのに、
「お帰りなさい」
「っ」
何を思ったのか、ゼロスは先程の言葉に対し返答してきた。
言葉に詰まり、視線は明後日の方向に固定したまま思考するが中々思うように纏まらない。
なんと返すべきか。
ぐだぐだと考える事、数秒。
が、何だからしくない自分に全てが面倒くさくなって、気付かれぬ様にそっと息を吐き出した。
そもそも考える程の事じゃない。
私の挨拶に、ただただゼロスが返しただけだ。
深い意味は無い。
意を決し、彼に向き合い───そして私は二の句が継げられなくなった。
「お帰りなさい、ユウさん」
そう嬉しそうに微笑むゼロスを目の当たりにして。
あとがき
ただいま
帰る場所。
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