「ま、ようやくあたしにも話が飲み込めてきたわよ」
「何?」
「要はあの魔道戦車はこの国で造られて、こいつらが盗み出したって事でしょ?」
「ほう? あの魔道戦車を知っているとは、もしやリナ=インバースとか言う小娘か?」
リナさんの言葉に、ジョコンダ侯爵は面白くなさそうにリナさんを見た。
その視線に混じる敵意を受け流し、リナさんは不敵に笑って見せる。
「言っておくけど、あれをぶっ潰したのはあたしじゃないからね? おばちゃん?」
「ふ、そう言う風評が立つ事が問題なのよ。あの魔道戦車の値打ちが下がりかねん」
「値打ちだと? あれを兵器として売りさばくつもりか」
「死の商人ってやつね」
なるほど。
リナさんは竜破斬は花嫁修業で覚えるみたいな事を言っていたけれど、勿論そんな事は無い。
大体にしてそれが本当なら、今ごろ夫婦喧嘩で街が消え、ストレス発散で山が消えているはずである。
当たり前の話、そんな事にはなっていないので、国の戦力は無差別広範囲虐殺の出来る花嫁───では無く、騎士や傭兵が主戦力。
となれば並大抵の攻撃を受け付けない魔道戦車があれば、戦争を有利に進められる。
何と言うか……。
「つまんない事考えたもんだわ」
「全くですね」
リナさんに同意し、珍妙団を見やる。
そんな事に労力を割くくらいなら、他にやれる事はいっぱいあるだろうに。
呆れた視線を注げば、そこに正義の使者のアメリアさんが名乗りを上げた。
「つまりは悪って事ですよね!? ならばこのアメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが正義の名のもとに成敗しますっ!」
「ほぅ、その名前、セイルーンの王族か」
大国の名前に、侯爵が反応を示す。
「だったら何だって言うんです?」
「高潔を気取るセイルーンの風潮、鼻持ちならぬと思っていた」
「っ!!」
「セイルーンに喧嘩を売るつもりか? 残念だが、ルヴィナガルドとセイルーンじゃ国の規模が違いすぎるぞ」
「さぁ、それはどうかしらね?」
ゼルガディスさんの言葉に、侯爵は余裕を見せた。
魔道戦車以外にも何か切り札があるのだろうか?
訝りながら彼女達を見やり、思考を巡らせたその瞬間。
それまで黙っていたポコタさんが声を荒げた。
「何をごちゃごちゃ言ってんだ! 俺はお前らを許す訳にはいかねぇんだ!」
そう言って続けざまに混沌の言葉を唱えると、呪文を解き放つ。
「爆風弾!」
凝縮した風が矢となり侯爵に襲いいかかる。
しかし、当たれば壁をも破壊できるその術は、彼女の前に立ちはだかった獣人が突き出した手のひらにより防がれてしまった。
「ふっ」
「デュクリス……」
容易に防がれてしまい、逆上したポコタさんは更なる術を唱え……って、その呪文はっ。
「この、烈火球っ!」
「ちょっと、その魔法っ!?」
「お下がり下さい」
リナさんが驚きの声を上げるのと、メイド姿の女性が侯爵を抱きかかえ避難したのはほぼ同時だった。
人が行使できる火炎系呪文の中で最強の術であるそれが獣人に直撃し、青白い炎が吹き出す。
さらに人間ならば跡形も残らず燃やし尽くすことが出来るほどの威力のある術の余波が、窓ガラスを吹き飛ばし、壁すらをも破壊した。
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