「……哀れな」
「リナさんに手を出すから……」
ボロボロになった街並みと兵士達を見ながら、呟くゼルガディスさんと私。
そんな中、
「リナっ!」
「よし、止めっ!」
今がチャンスとリナさんが呪文の詠唱に入ろうとした、まさにその時。
「黄昏よりも昏きもの
血の流れより紅きもの」
どこからともなく聞こえてきた混沌の言葉に、私達は動きを止めた。
「この呪文はっ!?」
「リナさん、あそこっ!」
いち早く詠唱者に気づいたアメリアさんが指差すその先。
塔の上にいたのは小さな影。
「時の流れに埋もれし
偉大な汝の名において
我ここに 闇に誓わん」
子供程の背丈も無いその小さな影は、淀みなく言葉を紡ぎ───
「我と汝が力もて
等しく滅びを与えんことを」
って言うか、黙って見ている場合じゃないっ!
私は大急ぎで呪文を唱え───そして。
「竜破斬っ!」
「竜破斬ですってえぇぇぇっ!?」
リナさんの悲鳴にも似た叫びが、爆音にかき消された。
竜破斬は魔道戦車の比ではない位、街に甚大な損害をあたえた。
街の半分は吹き飛び、出来上がったのは大きな入り江。
リナさん捕獲の為に街の人達が避難していたから良いようなものの、そうでなければ大惨事である。
……いや、家を壊された人にとっては、それはそれで大惨事だろうけど。
あのリナさんに手を出したのだ。
命が助かっただけでも良しとしなければ。
「取りあえず皆さん無事でよかったです」
「んきゃあああああっ!!」
「こんなことする奴がリナの他にも居るんだなぁ」
「んぎゃあああああっ!!」
「一体アイツは……」
「ふんぬぅうううっ!!」
「もう逃げちゃったみたいですね」
何とか防御魔法の展開に間に合い、事無きを得た私達は、窪みに流れ込む海水を見ながら口々に言う。
若干一名言葉にならない叫びを上げてるけど……。
そんな怒りの声も、アメリアさんの一言でハタと我に返ったようだ。
「ちょっと待ってよ! あたしの見せ場はっ!? あたしの立場はどうしてくれんのよおおおっ!?」
「いや……そんな事言われましても……」
怒りを再発させるリナさんに、アメリアさんが困惑する。
あの小さな影はアメリアさんが言ったように、影も形も見当たらないのだ。
私達にはどうする事も出来ない。
そして───
新しい入り江に、リナさんの絶叫がこだました。
「嫌あああああっ! 返せええええっ、あたしの見せ場あああああああっ!!」
あとがき
幕開け。
面倒事の始まり。
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