「全てはコイツから始まったのだ」
説明を求めたリナさんと私達が連れてこられたのは、ボロボロになった魔道戦車のある場所。
ワイザーさんはその使い物にならなくなった魔道戦車を見ながら、静かに語り始めた。
「正確にはこいつらと言うべきか。ここ最近ルヴィナガルド王国が開発した、この魔道戦車が次々に破壊される事件が起こっている」
「え、ちょっと待ってよ。それがあたしの仕業だって言いたいの?」
「うむ」
その言葉に反応したリナさんに対し、ワイザーさんは鷹揚に頷いた。
「冗談じゃないわよ!」
「嫌疑をかけるだけの証拠はあるのか?」
「勿論だ。それは……」
「……それは?」
「リナ=インバースだから」
「またそれかい!」
ごすっ!
言葉と共に放たれた右ストレート。
それをまともに頬に受け、ワイザーさんは地面へと突っ伏した。
「本当に暴れて欲しいみたいねぇ?」
怒りを滲ませ、起き上がろうとする彼の前に手をかざすリナさん。
そうして唱えられたのは、
「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの」
「うわぁぁぁぁぁあああっ! 待て待て待てっ!」
それを聞き、ガウリイさんは慌ててリナさんを羽交い絞めにした。
「ここでまた竜破斬なんて打ったらっ」
「止めてくれるなぁっ! 例え国家が相手だろうと、戦わなきゃならない時があるってもんよ! 放せぇええっ!」
暴れる彼女をなんとか抑え込み、落ち着かせようと試みる彼ら。
それを見て、ワイザーさんは「それだ!」と声を上げた。
「その呪文が根拠の一つだ!」
「え?」
「その呪文って……竜破斬の事ですか?」
きょとんと問い返すアメリアさんに、ワイザーさんは立ち上がりながら説明を続ける。
「あんたらも見た通り、あの魔道戦車は並みの攻撃呪文じゃビクともしない代物なのだ」
「それを破壊できるのは竜破斬級の呪文を使えるって事か」
「だからって、あたしがやったって決まった訳でもないでしょうに! 竜破斬なんて、花嫁修業で覚えるようなもんだし? ね、ユウ?」
「いや、そこで私に振られても……」
返答に困る上に、花嫁修業の一環だった覚えもない。
流石のワイザーさんもコレには呆れたように、「どこの風習?」とツッコミを入れている。
「とにかく! 竜破斬が使えるってだけで、犯人に仕立てられたらたまったもんじゃないっつってんのよ!」
確かに、呪文が使えるだけで犯人と言うのは些か乱暴過ぎる。
しかし、リナさんのそのもっともな反論に、ワイザーさんは臆することなく続けた。
「それに加えて! そんな危険な呪文を好んで使う凶暴性! 辺りの迷惑を考えない無分別! 笑ってすまそうとする理不尽さ! それらを総合的に判断したからこそ、リナ=インバースが犯人だと断定されたのだよ」
「きゃあぁああっ!?」
…………。
「そっかぁ」
「なるほど」
「それじゃあ仕方ないですね」
「そうですね」
「ちょ、ちょっとあんた達」
「それだけ状況証拠が揃ったら無理もないか」
「それに、過去の所業も考えたら当然と言えば当然な……」
「過去の所業ってなぁに?」
次々上げられた説得力のありすぎる言葉に、納得せざるを得ない私達。
何と言っても、私が知っているだけでも国と街が滅びているのだ。
今までお咎めがなかった方が不思議なくらいである。
けれど、
「大体、今回の一件で、あのカメをぶっ飛ばしたのは、あたしじゃないでしょうが!」
その一言で、私達ははたと動きを止めた。
「あー、確かに」
「そう言われてみればそうかもっ!」
「あまりにリナ=インバース説の説得力が高かったんで危うく騙されるところだったな」
「うん、うん!」
「もう! 肝心なとこ忘れないでよ」
言ってリナさんはワイザーさんへと向き直り、
「おっちゃんだってあのカメがぶっ飛ばされるとこ見たはずでしょ?」
「ははははははっ。何を言い出すかと思えば、そんなものZ一号の攻撃に巻き込まれて、気絶してたに決まってるだろうに」
「自慢げに言うなーっ!! 爆裂陣!!」
ごどばぁぁぁぁん!
ツッコミと共に放たれた怒りの呪文。
足元を吹き飛ばされたワイザーさんは、それはそれは高々と空中に吹っ飛ばされたのだった。
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