夏休みのご予定は

「……なんだこれは」
「体育祭のときのお礼よ。水族館は嫌い?」

無言で首を振る空条くんを見て良かった、と安堵した。この前もこんなやりとりをしたなと頭の隅で思う。

期末テストを乗り越えて7月の中旬、修了式。が、私達はというと空条くんはいつもの通りサボり。私も空条くんとゆっくり話したいことがあったから修了式をサボってしまった。……2学期からは真面目な人間になろうと思う。

話したいこと、というのは冒頭の通りで。体育祭のときのお礼を何かしら形が残るものでしたかった。空条くんの喜ぶものはなんだろうと考えたとき、こっちの世界に来る前に友人に聞かされた承太郎くんのプロフィールを思い出した。将来はヒトデ博士で、海洋図鑑とかが好き。と、友達が言っていた。それなら水族館とか好きなんじゃ、と思いついた。幸いなことに水族館のチケットが2枚、この前商店街でやっていた福引で引き当てたものが引き出しに眠っていた。

「そういう訳だから、誰かと一緒に行って来なよ。8月の間無料で入れるらしいから」
「てめーは行かねえのか」
「え、私そこまで図々しくないけど……」

お礼なんだから私が一緒に行ったら意味がないじゃない。私がそう言うと空条くんは暫く考えてチケットの内1枚をわたしに差し出した。ん、とだけで何も言わない。

「空条くんカンタみたいになってるよ」
「カンタ?」
「あ、そうかまだこの時代にないのかト◯ロ……」
「何ぶつぶつ言ってやがる。おれが貰ったんだから誰と行こうが勝手だ……受け取れ」
「……うす」

なんだか釈然としない。いや、確かに空条くんにあげたから自由にしてくれていいんだけどさ。

「私と一緒でいいの?」
「日程は」
「無視か。……8月上旬は課題終わらせるからそれ以外だと助かるかな」

それじゃあこの日で、と予定はあっさりと決まった。……空条くんって休みの日とか何してるんだろうか。想像つかない。また今度聞いてみよう。

無言で過ごす屋上から今では夏休みに一緒に水族館。彼とも随分と仲良くなったな。男女を気にせず付き合える良い友達……しかも互いに唯一の友達だ、多分。

「あ、そうだ。体育祭のときの人たち退学したらしいよ?」
「自主退学らしいぜ。というか、戻らなくていいのか」
「んー、もうちょっとだけいる。ってか自主退学ってあやしいよそれ、空条くんが何か根回ししたんじゃない?」


あはは、と軽口を叩く。今こうやって笑い話に出来るのも空条くんが助けてくれたからで。当の本人は「さあな、」とだけ言いニヤリと悪い笑みを浮かべた。