私はそこまで鈍感な人間ではない。
「赤木さん放課後練習しよ!」
「あっ赤木さん練習後寄り道しよーぜ!」
「……赤木さんってさ、好きな人とかいるの……?」
「俺、二人三脚で1位取れたら赤木さんに言いたいことあるんだ……」
「あいつゼッッッタイ私のこと好きだろ!!」
「知らん」
演技ではなく本当に鬱陶しそうに空条くんは言う。沢田くんと関わる日々が始まってからは予想以上に大変だった。私の後ろを何かとついて来るし練習は毎日のように誘われるし授業中背中に受ける熱視線etc……。ここから導き出される結論:沢田くんは私が好き。異論は許可しない。
自意識過剰ではないと断言できる。だって私はそこらへんの少女漫画のヒロインのような鈍感ではないから!あれだけされても気づかないのはそれこそ漫画の天然ヒロインぐらいだろう!!
「ってか二人三脚で勝ったらって何かかっこ悪いな!!!?」
「うるせぇ!」
屋上の金網をガンっと殴って叫ぶと空条くんに怒られた。それでも私の爆発は収まらない。
「だって分かるじゃん!あれで何でバレてないって思えるんだろう。空条くんから見てもそー見えるでしょう?」
「まぁな」
「ほらぁ〜……」
勘弁して欲しい。溜息と一緒に言葉が漏れた。それでも今日も今日とて彼との練習に向かうのだ。空条くんはせいぜい頑張れよ、とだけ言って私の背中を見送った。いや、止めて欲しいんだけど。
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やって参りました体育祭当日。天候は晴れ。素晴らしい体育祭日和だ。照りつける太陽が眩しい。
空条くんは結局サボるのかと思えば普通に参加していた。開会式とラジオ体操はサボっていたけれど。ていうか私もサボった。私たちはサボったそのままクラスのところには戻らず、体育館の入り口の石段に腰掛けている。ここからだとグラウンドが見えるし日陰だしちょうど良い。クラスの応援席は日が当たっていて暑そうだから行きたくないんだよねぇ……。私は今朝配布されたプログラムを開いた。
「空条くん混合スウェーデンだけだよね?プログラム最後の方かぁ」
「てめーのは……、午前の部最後と午後の部の最初か」
「うげー……。ご飯の前後じゃんしんどい。特にご飯食べた後に走るの嫌だなぁ」
「何も考えねーで返事するからだろ」
「あれはクラスの協調「赤木さーーーん!」、を…………」
出た。何故ここが分かった、沢田くん。
「2人共クラスのとこ行かねぇの?」
「いやちょっと……ははは」
「一緒に応援しようぜ!」
その応援云々が苦手なのだ。まず女子の声がうるさい。男子もうるさい。そしてうるさい。捻くれてると思われるかもしれないが周りが熱くなっている場ではどうにも冷静になってしまう。あのテンションについていけないからーーなんて言っても沢田くんは納得してくれないのだろう。
上手い言葉が見つからなくてちらり、と空条くんに助けを求めてみる。……けど今までこうしたときに空条くんが助けてくれたことはなかったな。と思ったのだが、意外にも空条くんは助け舟を出してくれた。
「…………コイツは肌が弱くてな。長時間日に当たると肌が爛れちまうらしい」
「赤木さんが?」
「今の時間帯の応援席は日が当たっていて余り近づけない……というやつだぜ……」
「ふーん……。なら空条は?」
「………………」
「あ、そっか。空条ワルだもんな〜。分かった、日陰んなったら赤木さんも来てよね!じゃあ!」
空条くんが黙ると沢田くんは勝手に理解して去って行った。なんていうか、嵐みたいな人だ。私は安心してほぅ、と息を吐いた。
「また助けられちゃった。空条くん言い訳の神様だね」
我ながら意味のわからない事を言ったと思う。少し前までの空条くんにならスルーされていただろうけど、今はくだらねーって小さく笑って言葉を返してくれる。
「カッコ悪りーな」
「ふふ、冗談。助かったよありがとう」
「ぎゃんぎゃん騒がれたら堪らねーからな……」
「沢田くんって犬っぽいよねぇ……あ、プログラム始まる」
そこからは応援でもしゃぐでもなく2人でぼんやりグラウンドを眺めていた。対象的にグラウンドは応援で賑やかになる。
私と空条くんだけ空間から切り離れたみたいだと思った。