銀時との出会い
「あー!いけすかねぇ!」
うだるような夏の暑さ。鳴り響く蝉の声よりももっと大きな怒号と、ドカドカ苛立ちを含んだ足音が屯所内の廊下から聞こえてきた。その足音は次第にこちらに近づき、スパンッと乱暴に私がいる部屋の障子が開けられた。
「あ、おかえりなさい。」
「おぅ。…んだこれ!火つかねぇじゃねぇか!」
自室で掃除をしている私に特に驚いた様子も見せず、彼はドスンと座布団に腰を下ろし胡坐を組んだ。口には既に煙草が咥えられており、胸ポケットからライターを取り出し着火を試みる。が、ちょうどガス切れだったらしい。苛立ちに任せて何度もカチカチカチ親指を動かし続けるが出ない物は出ない。
「あんまりイライラしてると血管切れちゃうよ、トシくん。」
「落ち着いて。」と机上の籠に入れていた予備のマヨ型ライターで煙草に火を付ける。
満足そうに大きく煙を吸い込んでは吐きだす男の姿に、「禁煙させなきゃ」と心に決める。
「おい、まな。町で銀髪のもじゃもじゃに会っても近づくんじゃねぇぞ。」
「白いもじゃもじゃ、って言われてもなぁ。」
「あ、あれ、なんでこうなったんだろ?」
柱に体を縛りつけられる。
「あーおたくも捕まっちゃった感じ?運が悪いねぇお互い。」
真後ろでもう一人男の人が捕まっているらしい。
今日は非番だから太刀は持ち合わせていない。着物の袖に縫い付けた隠し刀が一つあるだけ。しかしこれでこの縄を切り落とすのに一体どれだけの時間がかかるか。もたもたしている内に男たちに気づかれるかもしれない。そして私だけでなく、後ろにいるこの男性も一緒に斬られてしまうかも…。
だけど何も動かなければただただ殺られるだけ。
(この男性だけでも逃がさなきゃ!)
隠し刀を手にした瞬間だった。
「やめときな。」
「こういうピンチを救うのは男の役目だって相場は決まってんだ。」
「え…?」
ヴォエエエエエエエエ…!!!!
「やっべ!やっべぇ!昨日食い過ぎた蟹にあたったらしい!今すぐこの縄ほどけって!トイレ行かせてくれ!じゃねぇとこりゃ下からも…」
「やめろぉぉぉぉ!」
「…………」
「あの、あなたは…」
「俺は坂…」
「まな!無事か!」
「トシ君!みんな!」
「お、おめぇがまなを…!こんの腐れ天パ!神妙にお縄につきやがれ!この鬼の副長土方十四郎が直々に介錯してやらぁ!!」
「うぉっと!誤解誤解、誤解だから!俺じゃ…ねぇ、っつーの!!」
ひらひらと空から舞い降りた名刺には「万事屋 坂田銀時」と記されていた。
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