03




数日前、烏野と練習試合をして俺たちは負けた。

あの影山が、スパイカーに合わせている事に驚いた。ほんの少しだけ悔しいと思った。次は、絶対に負けねぇ。と意気込んで練習をしていてしたら「あ、テーピング切れてる」と及川さんの声が体育館に響いた。「お前が、捻挫なんかするからだろうボケ」と怒鳴る岩泉さんへ手を挙げた。

「俺、買いに行きましょうか?」
「いや、それは悪いだろ、及川に今日買いに行かせる」
「でも、及川さんにトス上げて貰えないと俺らが困るので、ひとっ走り行ってきますよ」
「…悪ぃ、頼んでいいか」
「他に足りない物あったら買ってきます」

体育館の端でシューズを脱いで買い出しへ行く準備をしていると「俺、塩キャラメル」とタオルで汗を拭っている国見が言った。

「俺は、パシリじゃねぇよ」
「自分から買い出し引き受ける神経が理解できない」
「仕方ねぇたろう、先輩に行ってもらうよりは気が楽じゃん」
「…まぁ、そうだね」

こうゆう時、マネージャーが居たら行ってくれるんだろうなぁと青葉城西にいないマネージャーについて、考えている時に思い出した。
そう言えば、国見は、中学の頃一つ上のマネージャーと付き合ってなかったっけ?最近、その話聞いてねぇな…まぁ男同士そんな話しねぇよな。

「じゃあ、行ってくる」
「いってら〜」

ジャージを着て、駅前にある少し大きめのスポーツショップへ向かった。テーピングだけなら近場の薬局で良かったけど、ドリンクやアイシングなど買え変えた方が良さそうだったので、店内を一人歩き廻っていた「あ、金田一っ!」とテーピングが並んでいる棚の前で、呼ばれて手を止め、声のする方を向いた。

そこには、サラサラの髪が肩までかかった、小柄な女子……だれ?名前を呼んでたのは確かに、この見知らぬ女子がいる方だったけど、気のせいかなと、またテーピングの棚へ視線を戻した。

「え、金田一…でしょ?」

これでいいかな、ってテーピングに手を伸ばした腕を細くて小さな手に掴まれた。ビくッと肩をあげて、その手から徐々に視線をあげると先程の見知らぬ女子だった。…だれ。と必死に記憶を辿ったけど、一致する知り合いがいなかった。

「え、ちょっと、私だよ?みょうじ」
「……っは?!」

店内だという事を忘れていた。
周りにいた人にすみません、と頭を下げて、再び視線を戻した。元から小柄なだったけど、髪を伸ばすだけで、こんなに変わるのか…と凝視してしまった。前髪のせいか?前髪を流しているから以前よりも目が大きく見える。その目に、引き込まれそうになっていた。

「そんなに驚かないでよ!」
「いや、驚くだろ!変わりすぎ」
「そう、かな?髪の毛、伸ばしただけだよ」

伸びた髪の毛を整えるように触るその仕草も見慣れない。女子ってこんな一カ月弱で変わるのか?とまた凝視していると「なまえ」と優しい声にみょうじは振り返って「あ、見つかりましたか?」とぱっと華が咲いたように微笑んだ。

俺より少し背の低い、綺麗な顔の男が俺を見て「知り合い?」と問いかけた。


「中学の同級生です、ねぇ、金田一」
「え、あ、はいっ!」
「へぇー、テーピング減ってた?」
「全く無い訳では無いですが、減っていたので…いいですか?」
「聞かなくても必要なんだから、いいよ」

みょうじが、男と話しているのは見慣れているけど、みょうじの雰囲気が全く違うだけで、男女の仲に見えてしまう…と思っていたら、男の方がみょうじの手首を掴み「それでは、また」と目の前から二人の姿が遠くなっていた。

必要な物を全部買って、部室に買ったものを片付けている時に、影山でもあんなに変わったんだからみょうじも変わるよな…なんて、考えていると国見が「なんかあったの?」と部室に顔を出した。

「お前、ロードーワークは?」
「…金田一が、険しい顔していて心配だからきた」
「嘘つくな、バレるぞ」

今、大丈夫と、国見は部室へ入ってきた。こいつ本当にサボるの上手いよな、と感心していたら「で、何があったの?」と聞かれたので、「みょうじに会った」と伝えるとふーんと素っ気ない返事が返ってきた。まぁ、興味ないことは分かっていたけど、お前から聞きたんだからな?

「みょうじ、変わってた、なんか、女っぽくなってた」
「それ、今までが女じゃないみたいな言い方するじゃん」
「お前が、それ言うか?」

国見は顔にあまり出さないけど、今、国見が凄く不機嫌なの顔をしているのは分かる。
だって、国見は「みょうじをそうゆう風に見れないってフったじゃん」とサボっている罰だよって意味を込めて、ちょっとだけ嫌みたらしく言った。

「…金田一、うざい」
「今のみょうじみたら後悔すんじゃねぇ?」

なんて、ふざけながらそう言って、最後の一つのテーピングを仕舞おうとした時「もう、とっくにしてるよ」と小さく不貞腐れた声が聞こえた。

「は?!お前、何言ってんの?彼女いるだろ」
「金田一の考えているそうゆうのじゃないから」
「なんだよ、それ」
「…友人として、後悔してる」

中学の時、ほぼ毎日、国見の隣にはみょうじがいた。けど、ある時期を境に国見の隣からみょうじは消えた。
誰にでも好かれるタイプのみょうじを無条件で隣に座らせていた事を憎んでいた奴らを少なからず俺は知っていた。知っていたけど、国見にも少しだけ気があると思っていた。
だから、当時、みょうじをそうゆう風には見えないと振った、と聞いて驚いた。

でも、今の今まで、国見が降った事を後悔しているように見えた事は一度もなかった…はずなのに…後悔を認めた事に驚いた。




*前】【次#