04
「俺、賢二郎は、年下対象外だと思ってた」
天童さんが、牛島さんのためにダンベル追加欲しいから、マネージャーと買い出しへ行ってきて、と朝練終わりに言われた。
教室に向かうと、欠伸をしながら言うこいつには、いつも主語がない。まぁ大方何が言いたいか分かってしまうのは、同じ部活、同じ部屋、同じ学年、嫌でもこの一年間一緒に居たからだろう。
それにしても、こいつの言い方はどうなんだ?
正直、年下は、関わりたくない。
でも、部活に入っている以上、部員とは、必要最低限は関わろうといる。うるさいおかっぱ小僧も同じだ。今年入ってきたマネージャーも同じ。部活の後輩でそれ以上でも以下でもない。それだけだ。特別に優しくした覚えはない。
「だって、いつもなら、荷物持ち嫌がって行かねぇじゃん。それこそ、瀬見さんに押し付けるだろう?」
「瀬見さんに頼んでみろよ?後で、部活やりづらくなるだろう」
「…あ、そうだな。あの人、年下専門だった」
「そうゆうことだよ」
そう言えば先週も一年に連絡先聞かれてるの見たなぁと昇降口で靴を履き替えながら太一が零した。
あの人、本当に年下に好かれるようなと部の先輩であるけれど、俺にとっては同じポジションを競う敵だから無用な情報まで集めてしまった。
「あ、賢二郎、あそこ」と室内履きを履くため下を向けていた視線を太一の声で、指差し先へ向けた。
「あぁ、まじ助かる!なんでなまえは宿題忘れないんだ?疲れて寝落ちとかしないの?」
「寝落ちはするけど、宿題終わってからかな?」
「すごいな!」
「普通でしょ!でも、さっき白布先輩に甘やかすなって言われたから次はないかもよ?」
「は?なにそれ」と五色が、声をあげた途端なまえは、ぷいっと今まで話していた相手に背を向けて、五色を置いて歩き始めた。
愛想のいいなまえにとっては、珍しい行動に俺と太一は無言で驚いた。けど、すぐに意味は分かった。
「あ、五色おはよう」とあいつらが話していた昇降口の別にクラスメイトが来た。あぁ確か、五色、クラスではクールキャラ演じているんだったな?とフンと鼻で笑って、教室へ向かった。…あ、午後の買い出しに俺が、付き添うことをなまえに伝えそびれた。
まぁいつか会えるだろう…。
昼休みに飲み物を買っている時に「白布さんが、笑うなって絶対にない」と憎たらしい声が聞こえた。
隣で太一は、噴き出していた。あいつ…俺がここにいるって知らねぇで言ってくれるな、と一発喝でも入れてやろうとしたら太一がこっち、と自動販売機から見えないもの陰に隠れた。
なんで、隠れんだよ?と目で訴えると、面白いじゃん!と笑った太一の横腹を殴った。でも、今ここから出ていくのも怪しまれる。仕方がないと二人にやり取りも見ていたら、体が勝手に動いた。
年下は関わりたくない、俺は面倒見がいい方ではないからだ。わがままを言われても対応できない。
でも、なまえは、わがままを言わない。それが同級生であっても、いつもノートを見せてほしいだの言って、教室やクラスメイトのいる所では話しかけないでほしいとわがままを言われている相手でさえも…飲めない炭酸に手を付けようとしていた。
そのぐらい、言えばいい、と取り上げて、俺がさっき買ったお茶を渡して、買い出しのことを伝えて、その場から立ち去る。
案の定、ニヤニヤしながら太一が「賢二郎は、年下対象外だよな?」と言った。うざいので、さっきよりも強く同じ部位を殴った。
放課後。
練習準備が終わったなまえは、部費の入った財布と携帯だけ持ち、「すみません、遅くなりました」と走って校門まできた。
走らなくてもいいってと朝のように言えばなまえは、口元を隠して笑った。
「今朝、白布先輩が笑った事を工に伝えたら、幻覚って言われちゃいました」
「お前ら、俺のことなんだと思ってるんだ?」
部員の話、八割五色の話で、学校から少し離れたスポーツショップへ向かった。
店内で別々に買い物を進めた。備品が結構無くなっていたので、これ追加分がなかったら一人で買いに行くつもりだったのか…一人で持てる量じゃない…。なまえを後で怒ってやろうと店内で見つめ合う男女が目に入り、足を止めた。
うちに入ってきたマネージャーは愛想がいいだからすぐに部員とも溶け込めた。誰に対しても平等、それが、他校であっても同じ。
背中に青葉城西と書かれているのに、仲よさに話している姿に何故かムッとした。そして、ムッとした瞬間、対象外っと太一の言葉を思い出した。
同じ中学の同級生だろうと、関係ない。青葉城西を白鳥沢に近寄られてたまるか。なまえを引き離すようにその場から連れ出した事を後悔した。
別になまえが、白鳥沢の情報を漏らすわけもないし青葉城西と仲よくても部には、関係ねぇだろう。対象外だろ。
「さっきは、ごめん、引っ張って」
買い出しの帰り道、比較的重たい物が入った袋を持ちながら謝るとなまえは、不思議に俺を見上げた。
何かありましたか?という顔で、「何がですか?」と顔と同じ言葉返ってきた。ただその普通の事がやけに俺の頬を緩ませる。
この一年近く、表情と言葉が一致してない奴が側にいたせいで、なまえがマネージャーになってくれてよかったと思った。普通の人間がそばにいるのはいい。
「同級生だったんでだろ?」
「あぁ〜、全然大丈夫です。中三の頃ほとんど喋って居なかったような仲なので…」
「凄い驚いてたのは?」
「多分、髪の毛伸ばしたからだと思います」
片手で、髪の毛を整えるように触るその仕草を何度見てもなまえの顔は曇っていた。
理由なんて知らない、なまえの髪が短かかろうと根本的な所は変わらない。だから、髪型だけで、あれほど驚くか?と少し青葉城西の男に不信感を抱いた。
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