後日談
「それは良かったねー…」
「守屋なんかテキトーに流してない!?ちゃんと聞いてよー!」
いや、毎度惚気話に付き合わされるこっちの身にもなって欲しいというのが僕の本音だ。
あれから彼女は毎日雲居先輩に差し入れとして和菓子を持っていっている。
彼も文句を言わずに受け取っている。
え?何で知っているかって?
だって、毎日雲居先輩、寮の部屋で彼女の差し入れ食べてるからね。
「昨日の紅芋団子食べてくれてた?」
「無言で食べてたよ。」
「はあぁ、そんなに美味しかったんだ!嬉しー!あれはねー、団子には勿論、タレにも粉末の紅芋が入ってるんだよー!」
しかし、最近の近重さんは楽しそうだ。
雲居先輩は恥ずかしいのか知らないけど、彼女の前では食べようとしない。
だから、近重さんは毎日どうだったか僕に確認を取ってくる。
案外相思相愛だと思うんだけど、これでこの2人付き合ってるわけじゃないのだから笑える。
早くくっ付いてくれないだろうか…
そしたら僕への被害は減りそうなんだけど…
「前よりはいい関係になったのは分かるんだけどなー…」
「あれ?どうしたの急に」
「いや、雲居先輩わたしの事名前で呼んでくれないんだよね…、いや名前は疎か苗字すら呼んでくれない…」
さっきの明るい態度とは一変してしまった。
そりゃもうorzが一番表現がいい大勢にまでなっている。
この人コロコロ表情変えて忙しくないのだろうか。
「今更恥ずかしいんじゃないのかな。あの人気難しい人だし。突っぱねられなくなっただけでも進歩だよ!」
「うん。だよね!差し入れは受け取ってくれるようになったし、次はせめて苗字で呼んでもらう事を目標にしよう!!」
ああー…。なんて前向きなんだろう…
雲居先輩も人が悪い。
寮では彼女を三人称で出す時はちゃんと“近重”と呼んでいる。
何故本人にそう呼んでやらないのだろうか…
また、その事実を彼女に告げない僕もまた人が悪いな。
「ほんと…、早くくっ付けばいい…」
そうなれば僕への被害も減るだろうなぁ…、とまだまだ先の事を考えて途方に暮れた。
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