7話
「え!?雲居先輩が他人の料理を褒めた!?」
昨日の出来事を守屋に報告したら、彼は目をかっ開いて驚いていた。
そうだよね普通そういう反応するよね。
わたしも吃驚したもんさ。
「褒められたというか、悪くないと評価を頂きました。」
「それは褒められたも同然じゃ…」
まさか、あの人が他人の料理に口を付けるとは思ってもみなかった。
そしたら守屋は、僕の時はあんなに…。とか何があったか知らないけど凄く落ち込んでいた。
「よう、近重最近ウザ元気じゃね?」
「はぁ〜、森崎。あんたのボキャ貧さには関心するよ〜。喧嘩の売り方まで普っ通〜とはね〜」
「てんめー!!!」
ギャーギャー森崎と喧嘩するのもまた日常と化してきている。
最初の頃からは想像出来ないくらいわたしの周りは騒がしくなった。
「あ、守屋ー。今日もオムレツの課題あるの?」
未だにギャースカ言ってる森崎を放っておいて、守屋に問いかけた。
守屋も守屋でスルースキルが見についてきたのか森崎の事は気にした様子もなくわたしの問いに答える。
「え?うん。一応毎日作る事になってるから」
「そっかそっか!わたしもお邪魔していい?」
「え?いいけど…」
「わたしもねー、お菓子作りたいからさー」
そんな感じで守屋と放課後調理室で約束を取り付けた。
何だか柱の陰からサガネ様が刃物チラつかせてこっちを睨んでます。
さっきゅんに何かしたら殺すわよ、和菓子女…と禍々しい言葉が聞こえてきてます。怖いです。
下手したら雲居先輩より怖い。
守屋とは助手仲間ってとこ以外はなんでもないから安心してほしいんだけどな。
わざわざ守屋のとこで作るのは先輩の話聞けるかなって思っただけでだな。
しかし、ちょっと先輩に褒められて調子に乗ってんなー自分。と自身に苦笑いだ。
その日の授業はあっという間に過ぎた。
洋食作りながら和菓子の事考えてたら先生に怒られたけど、あっという間だった。
放課後約束通り、実習室にて調理を始める守屋の顔を見て改めて思う。
「守屋って、下手くそな割りに楽しそうに料理作るよねー」
「何気に酷い…」
「わたし、そういうの大事だと思うんだー…」
慣れた手つきで餡子をこし器に掛ける。
守屋もそこそこ慣れてきたのか手際が前より良くなっていた。
「近重さん。雲居先生の事考えてる?」
「うん。何だろうなあ…、他人が口出しするもんじゃないのは分かってるんだけど、なんというか…」
「…言いたい事はなんとなく分かるよ。」
やっぱり守屋も同じような事考えてたようだ。
そりゃそうか。守屋ってパッとしないけど正義感は人一倍強そうだし。雲居先輩の助手歴もわたしより長い。
きっとわたしなんかより思う事はあるんだろう。
しかしあれこれ言ってどうにかなる相手じゃないのも重々承知しているし、そんな野暮な事するつもりもない。
「だから考えたんだけどさ。料理の問題を解決するなら料理かなって」
「じゃあ…、そのお菓子…」
「うん。また食べて貰えるかどうかはわかんないけど」
「…近重さんって、意外に健気だね。」
「意外にってなんだ意外にって!!」
守屋も中々言いよるわ。…全く。
そう、また雲居先輩に食べてもらえたらと思って今和菓子を作ってる。
しかも、今回のは自信作。
というか、わたしの実家の看板メニュー、胡麻饅頭。
以前は食べてもらえなかったものだ。
これ、考え変わるくらい美味いぞ〜。
考えたら早く食べてもらいたくなってきた!わたしは、気合いを入れて作業に戻る。
「…僕からしてみれば、近重さんもよっぽど楽しそうに料理作ってるように見えるけど…」
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