進路が決定しました
あの最後のスパイクを見た時、私は思ってしまった。
もし、翔陽くんが飛雄くんと同じチームになったら、何かが変わるかも知れない。
あのトスに反応できるスピードと反射神経を持っている翔陽くんなら、飛雄くんの速攻に十中八九着いて来られるはずだ。
私は観たかった、飛雄くんがセッターとして120%を出しているところを。翔陽くんの身体能力ならそれが出来るんじゃないだろうか。それに、人に対して真正面からぶつかれるその真っ直ぐな性格で、飛雄くんのことを変えられるんじゃないか、とそう思ってしまった。そんな、タラレバは願うだけ無駄かも知れない、けど。
私は翔陽くんのこの先の成長が見たくなってしまった。
「あ、いた…!」
帰る前にもう一度話したくて、片付けもそこそこにオレンジ頭を探していると難無く見つけることが出来た。
「翔陽くん!お疲れさま!」
「ふえあ、みすず…!」
「あ、北一の…」
あ、お友達も一緒だ。
「結果は残念だったけど…凄かった、私興奮しちゃった!」
「え、と…応援ありがとう、」
「翔陽くんはホント不思議だね、つい応援したくなる力を持ってる。それってすごいことなんだよ!」
「あー…なんか、わかる気がする」
「ふふ、なんとかしてボールを上げようとする2人も格好良かったよ」
「! そんな、俺たちは…」
「僕たちがもっと出来てたら…」
「卑下することない、バレーボールは繋ぎの競技だから。2人が繋がなかったら、翔陽くんは今日1本もスパイク打ててないもん」
「「!」」
「2人共バレー部じゃなかったんでしょ?たぶんキミはサッカー部、手より足が出てたし」
「うっ…」
「セッターくんは…たぶんバスケ部かな?」
「え、どうして…」
「動きがそんな感じだったかなあ…詳しくはわからないんだけどね」
みすずの鋭い観察眼に舌を巻く3人。
ほとんど未経験のバレーボールであそこまで反応できていたのは、2人ともそれぞれの分野ではわりと上手な選手なのだろう、とみすずは見ていた。
「翔陽くん、キミはたぶんこれからすごい選手になると思う」
「えっ、」
「進学する高校は決めてる?」
「へ、あ…えと、烏野に…」
「烏野…?」
「うん、小さい時テレビで見たんだ。烏野が全国に出場してる試合。“小さな巨人”って呼ばれてた選手がすげー格好良くて、それで俺はバレーを始めたから」
「…そっか、わかった。じゃあまた、烏野で会おう」
「えっ、それってどういう…?」
「ん?私も烏野に行くことにしたってこと」
「「「ええぇえーッ?!」」」
「じゃあまたね、翔陽くん!」
たったっと足取り軽く駆けて行ったみすずに3人は呆然と立ち尽くしていた。
「…あの可愛い子の進路をお前が決めたってことか翔陽」
「いや、俺、ぜんぜん…何が起きてるのかわかってないんだけど…」
「あ、あの子…翔ちゃんのことが好きなのかな?!」
「す、スキぃっ、?!」
「勘違いしないで欲しいな」
「「「!?」」」
いきなり、ぬっと現れた国見は驚く3人に冷たい視線を寄越すと恐らくみすずを探していたのか、そのまま何か言うでもなく後を追って行った。
「と、とりあえず…翔ちゃんは受験頑張んなきゃね」
「…帰ろうぜ」
「お、おう…」
進路が決定しました
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