コート上の王様を支えたい
決定的な瞬間を、目の当たりにした。
それは、チームメイトが飛雄くんを見捨てたのか、飛雄くんが皆を置いてけぼりにしたのか、分からないけれど。
「飛雄くん」
「ごめん」
「なんで謝るの」
1人になりたいだろうけど、私は1人にしたくなかった。
ここで1人にしたら飛雄くんはずっと、独りぼっちになってしまいそうで。だってこんなに、小さくなった飛雄くんの背中、初めて見る。
「…お前を、全国に、連れて行きたかった」
「うん」
「なのに、俺は」
立ち止まった飛雄くんがゆっくり振り返る。
ああ、お願いだからそんな顔しないで、飛雄くん。私だって何か出来ればよかった、ずっとずっと見てたのに、何も出来なかった。
「私は、飛雄くんの誰よりもバレーが好きで、頑張り過ぎちゃって熱くなっちゃうところ嫌いじゃない。だから、飛雄くんの良いところは絶対に失くさないで欲しいって思ってる」
「みすず…」
「…ただ飛雄くんの120%が見たかった、それはたぶん徹先輩を初めて見た時の興奮をきっと超えると思ったから。けどそれは1人じゃ出来ない。」
「……」
「私たちまだ中3だもん。まだまだバレーボール出来るし、色んな人と出会っていける。全国だって何度もチャンスはある。初めてプレーを見た日からずっと期待してるよ、飛雄くん」
ぐっと拳を前に出してみる。
たぶん今日の試合は飛雄くんにとって大きなしこりみたいなものになると思う。それは多分、私では取り除けない。同じコートに立つ選手にしか取り除けない。けど、傍で支えてあげることは出来る、折れないように、そっと。
飛雄くんの手が伸びて来て、拳が合わさると思ったその時、ぐいっと出していた腕を引かれた。
「えっ」
「…少しだけ」
「と、とび、飛雄く…」
「ごめん、少しだけ」
体勢を崩して飛び込んだそこは、飛雄くんの胸でそのままぎゅっと抱き締められた。
寂しい、のかな。
そうなっても仕方なかった、むしろ今まで総崩れしなかったのが凄いと思えるくらいには北一のメンバーは飛雄くんに合わせようとしていた。
でも今日の試合で焦ってしまったことが、極めつけになっちゃったんだ。
勇太郎くんも、英くんも…きっと本当は分かってる。分かってるからこその、行動だったんだと思う。だから誰を責めることも出来ない。でもこれで、飛雄くんはやっと気付けたんじゃないかな。
ぽんぽん、と背中を撫でると飛雄くんの力が抜けた。
「俺はもっと、強くなるから」
「…うん」
「ずっと期待してて欲しい」
「うん」
「もっとお前に最高の試合を、プレーを見せてやる」
「楽しみにしてる」
コート上の王様を支えたい
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