お初にお目にかかります





みすずは本日も青葉城西の試合を観戦しに、体育館へ足を運んでいた。

受験のせいで生で試合を観ること自体が暫くぶりであったため、非常に軽い足取りで今日も今日とて、観客席を走り回っていた。


青城の1回戦が終わって、アリーナの方へ向かうとお目当ての及川がみすずに気付いて声をかける。すでに青城のメンバーには認識されているため、よっ、と皆軽く挨拶をしてくれるので、みすずもお疲れ様です!と頭を下げた。



「みすずチャンひさしぶりだね!」

「はい、お久しぶりです!今日もキレキレのサーブと息の合った連携、格好良かったです!」

「岩ちゃん!今日も俺のファンかわいい!」

「うるせぇよ、みすずもコイツあんま調子乗せんな」

「岩泉センパイのスパイクも!ここぞと言う時に絶対に決まるって言う安心感があって、格好良かったです…!」

「恥ずかしいからやめろ」

「みすずちゃん、岩ちゃんが照れてるよ激レア」

「? 本当のことなので照れなくても…」

「(だから恥ずかしいんだろうが)」

「あ、みすずちゃんじゃん元気にしてた?」

「しばらく顔見なくて寂しかったよ〜」

「貴大センパイ、一静センパイ!おひさしぶりです!」



わらわらと青城生に囲まれ、先程の試合についてそれぞれに感想を述べて行くみすず。

チームの新体制について話す頃には、皆が真剣な顔をして聞いていた。及川が主将なら何も心配することはないとみすずは思っているが。



「にしても春からみすずちゃんが来るとなると、もっと心強いな」

「4月からよろしくなみすずちゃん、頼りにしてるよ」

「え?」

「「「「ん?」」」」

「わたし青城には行きませんよ?」

「「「「……ハァッ?!?」」」」

「みすずチャンそれ本気なの?!?」

「わわ、っ」



徹センパイにがしっと肩を掴まれた。

ぐぐっと近付いて来る綺麗な顔にたじろいでしまう…どうして、みんな、そんな有り得ないみたいな反応を…!

確かに学校見学と称して、よく遊びに行かせてもらってましたけども!



「落ちたとかじゃなくて?!」

「頭は悪くない方かと…」

「じゃあなんでさ!!」

「な、なんでって…」

「お前のファンじゃなくなったんじゃねぇの及川」

「なッ…え、そうなの……?」



そんな、捨てられたわんちゃんみたいな顔しないでも…。

でもまさか私が徹センパイのファンじゃなくなるなんて有り得ない。私はきっとずっと、この人がバレーボールを辞めない限り、ファンでいると思う。それでも、私は、徹センパイより近くで見ていたいものが出来ちゃったから。


顔が近付いたお陰でいつもよりずっと近くにあるその頭に、ぽむと手を置いてみる。



「徹センパイにはそう見えるんですか?」

「みすずちゃん…」

「わたし走って感想言いに来たのになぁ、そっか…徹センパイにはそう見えるんですね、」

「ち、ちが…っ!そんなみすずちゃんは俺のこと大好きだもんね!!ごめんね!!」

「、んわっ(なんかちょっと思ってたのとちがう!!)」

「こらクズ川!!公然とセクハラしてんじゃねぇ!!」

「痛い岩ちゃん!!」

「ナイスキック岩泉ー」

「もっとやれやれー」



勢いに任せてぎゅっとみすずを抱き締めた及川の尻をいつもの如く岩泉が蹴り飛ばし、それを囃し立てる。

ああ、きっと良いチームになるんだろうなあ。とみすずは少しだけ寂しい気持ちになった。



「あ、もうこんな時間!じゃあ先輩たち次も頑張ってくださいねー!!」

「また連絡するからねー!」

「…つーかお前もみすずの進学先聞いてなかったのかよ」

「だって、青城来るもんだと思ってたから…」

「ま、そうだよな…あんだけ及川の追っかけしてんだから普通そう思うわ」

「忘れてたよ」

「なにを」

「みすずちゃんは俺のファンじゃなくて、バレーボールのファンってこと」


……………。



「キモっ!及川キモ!!」

「お前調子乗るのもいい加減にしろ〜」

「キモ…?!マッキーそれはひどくない?!」

「アイツはずっとバレー馬鹿だろ。忘れてんじゃねぇよ」





◇◇◇



「あ、いたいた…烏野高校。相手は……伊達工業かあ」


みすずの本日のお目当ては、烏野高校だった。

観てから、行ってから。
自分の目で見てからでないと情報を入れたくない性分のみすずだったが、さすがに進学先の高校のため少しだけ事前に情報収集をしていた。

どうやら、烏野高校の男子バレーボール部は3年前くらいまでは強豪と呼ばれていたらしく、1度だけ全国にも行っていた。その時に翔陽くんが言っていた「小さな巨人」もいたそう。そして、そんな彼らを指導していたのが名匠・烏養一繋監督だ。けれど、その監督が体調を崩してからは、どんどん力を失ってしまいら今では「落ちた強豪、飛べない烏」となんとも不名誉な異名で呼ばれている。


……そう聞いていたけど。



「(見る限りはバランス悪いわけでも無さそうなのにな…)」



選手たちは、やる気に満ち溢れている。
このキラキラしてるかんじ、凄く素敵だなあ…。目立って背の高い選手とかはいないみたいだけけど、安定型のチームという感じがする。

あれ、あのリベロ…千鳥山の西谷夕さんだ!ベストリベロの人だ!!え、ていうかあのレフトの人、清光台の…えっと、たしか東峰旭さんだったかな。結構なパワースパイカーだった気がする…!えーっ、烏野ナメてた…これは期待値爆上がりじゃないですか。


でも、相手は鉄壁と言われる伊達工業。
どう戦う?烏野高校…!




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