天使と烏の出逢い
一体、何本のスパイクを止められたんだっけ。
気付いた時には試合が終わっていて、烏野の雰囲気は最悪のものになっていた。東峰旭さんのスパイクはことごとく伊達工のブロックに止められ、ついぞトスを呼ばなくなってしまって、その内に試合終了の笛が鳴っていた。
知らない、まだ何も知らない人たちだけど、どうしてこんなに胸が苦しくなるんだろう。
ぽたぽたとスカートに涙が落ちた。
私が泣いてどうする、何も知らない私が泣いてどうするんだ。
(でも知ってる、この、胸が痛い感じ。)
ポテンシャルは高いと思う。
これから伸びる要素は沢山見えた。ただ、成長や変化は、それを望む者にしか訪れないから。
とわそれはもうクセみたいなもので、気付いたら走り出していた。気付いたら階段を駆け下りて、真っ黒い姿を探していた。言わなきゃ、伝えなきゃ、何をかは分からないけど。
「あ…」
いた。
体育館の一角で、静まり返った烏たちがクールダウンしている。その姿を見ると、さっきの試合を思い出して、また涙がこみ上げてきた。いや泣いてる場合じゃないわたし。
すぅ、と息を吸い込む。
「っあの!!」
「「「「?」」」」
急に響いたみすずの大きな声に、烏野の選手たちが目線を寄越す。
みすずはもう一度大きく息を吸い込んだ。
「お、応援してます!烏野高校…っ!!」
「「「「!」」」」
誰だか分からない、ましてや烏野の生徒でもない女の子は、泣きそうな顔でそれを伝えるとばっと勢い良く頭を下げて駆けて行った。
「…だ、大地さんか誰かの妹さんっすか?」
「いや違う、でも…」
「元気づけられたな」
「天使だ、」
「西谷はまた大袈裟だなぁ」
「いや…勝利の天使です」
「?」
そこに東峰旭の姿はなかった。
天使と烏の出逢い
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