美人マネージャーに見つかる
まずい。中が見えない。
やっと烏野男子バレー部を見に来ることが出来たというのに、体育館のドアはどこも閉めきっていて窓もある程度の高さがあるため、見学出来そうにない。
「うんん、どうしよう……あ」
入口の脇に高さのある靴箱を発見した。
これに登れば見える…かな?と思って、足をかけてよじ登ってみる。あ、見えそう、ちょっと不安定だけど。でもなんか、これ覗きみたいだな…北一も青城も及川徹ファンのためにわりと開放的だったしなあ。
(あれ、いない?翔陽くんはともかく、飛雄くんも……)
「あの」
(西谷夕さんと、東峰旭さんもいない…もしかして辞めちゃったのかな?そんな、)
「ねえ」
「?! あ」
突然、済んだ声が聞こえて驚いて振り向くと眼鏡の美人さんが立っていた。
この人マネージャーさんだ、この前の大会の時にベンチにいた人だ。選手じゃないけど、すごく綺麗な人だったから覚えて、る…あああどうしよう、こんな覗き魔みたいな姿見られてしまった、うえ、出禁になっちゃうかな?!
「パンツ見えそうだよ」
「! す、すみませ…!」
「あれ、あなたは…」
「あの、あの…わたしは、その」
「…来て」
「えっ」
靴箱から降りながら、なんて言い訳しようと考えていると、美人マネージャーさんに優しく手首を引かれた。
思わずドキッとしてしまったのも束の間、そのまま体育館に連れて行かれてしまう。ど、どうしよう、要注意人物だから気を付けてとか言われたら、どうしよう!!
「潔子さん!お疲れさまで……ス!?」
「ん? あれ…清水その子」
「覗いてたから連れて来た」
「ひっ す、すみませんでしたッ……!!!」
「超速攻土下座ァ?!」
シュタッという効果音が付きそうな程に綺麗な土下座を繰り出したみすずに、ぎょっと目を剥くバレー部員たち。
当の本人は怒られる、叱られる、出禁にされる、バレーボール見れない、日向翔陽が見れない、烏野に来た意味がない、と言った風なことをぐるぐると頭の中で考え込んでいた。
その思考を止めるように肩に優しく手が触れた。
「顔上げて。覗いてたことを怒りたいわけじゃないよ。あとパンツ見えるよ」
「パ、パッパンッ…?!」
「パーカッションか」
「もしかして、県体の時の…?」
「うん、たぶん…ね?」
「、はい!」
覗き込まれた綺麗なお顔にきゅんとしながら頷いてみせる。
でもまさか、覚えててくださっていたとは。思い出すと少し恥ずかしいけど、なんだか嬉しい。
「そうか、烏野に入ってくれたんだな!」
「え…皆さんも覚えて……?」
「もちろん、忘れるわけないよ」
「スッゲー元気もらったっスもんね!」
応援していると言ってくれたその少女に、どれだけ救われただろうか。
やる気を失いかけた所を引きとめたそのたった一言は、バレー部員の記憶にしっかりと残っていた。
「マネージャー、やるでしょ?」
「えっ いや、わたしは…」
「もう他の部活決めてるの?」
「そう言う訳ではないですが……」
「じゃあ、良ければ是非お願いしたい」
「でも、わたしは…ただのファン、なので」
「? ファンだと、ダメなの?」
こてん、と首を傾げた美人マネージャーさんの破壊力がすごい。
だけど私にはマネージャーをやる資格はない。ファンだからこそ、近くなりすぎてはいけないってそう思っているから。まあ、北一のみんなとは結局仲良くなっちゃったけど…。
「手が足りなければお手伝いはしたいです、でもマネージャーになるのは…ちょっと」
私は、翔陽くんの成長が見たくて烏野を選んだ。
それは邪な気持ちなのだと思う。それに、私は烏野の試合中でも他校の試合を観たいと思ったら、足を運びたくなってしまうと思う。いつだって1番が烏野だとは、思えないかも知れないから、きっと向いてない。
「無理強いはしないけど、何か気を使ってるならそれは必要ないと思うよ」
「!」
「俺たちは君にマネージャーやってもらえたら嬉しいけどなぁ。な、田中」
「そ、そっスね!うん!やってほし、いっス!」
「…考えさせてください」
見透かしたような主将さんの言葉に、セッターの先輩と田中さんが続く。
そう言われてしまうと、無下に断るわけにもいかこのまま練習を中断させるのも申し訳ないので、答えを先延ばしにしてしまった。
美人マネージャーの清水潔子さんが中で観て行って良いと言ってくださったので、そのままお言葉に甘えて見学させてもらうことにした。
「あ、そういえば、新入部員に影山飛雄と日向翔陽って子いませんか…?」
「知り合いなの?なんかね、すごく面白いことがあったみたいで」
潔子さんから聞いたお話に思わず声を出して笑ってしまった。
美人マネージャーに見つかる
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