お兄さんと再会する
青葉城西高校との練習試合が決まった。
顧問の武田先生が取り付けてくれたらしいけれど、ちょっと複雑な気持ちだ。誰にも進学先伝えてないから、飛雄くんと同じところにいるって知ったら……いろんな人がいろいろ面倒そうだ。
「みすずも肉まん食べるか?」
「えっ でも」
「遠慮しなくて良いんだよ、先輩に奢られときなさい」
「あ、ありがとうございますっ」
考えごとをしながら歩いていたら、いつの間にか後ろから来ていたらしい、大地センパイと翔陽くんと田中センパイが合流していた。
私までおごってもらえるなんて、なんだか申し訳ないなあ。
「あ、そうだ……田中センパイ」
「え゛っ、お、おれっ…?なに?」
「お前いつまで後輩相手に緊張してんの」
「龍センパイって呼んでいいですかっ?」
「……!!!!」
「「音もなく崩れ落ちた!!」」
「女子からの、先輩って響きも、龍って響きも新鮮だろうからなぁ」
「…やめた方がいいですかね、?」
「いや!!それでいい!そう呼んでくれ!!呼んでください!!!」
「あ、ハイ」
「ごめんな…女子に対してはなんかこんな感じなんだ」
「私も軽口叩いてもらえる仲になれるよう頑張りますっ」
「そこは頑張らなくていい」
と、前方にスガ先輩と、追いかけて行った飛雄くんの姿が見えた。
「スガー!」
「スガさんー!」
「菅原さーん!」
「スガ先輩〜!」
「大地さんが肉まんおごってくれるって!」
坂ノ下商店に入って行く大地センパイに着いて入ると、駄菓子から生活用品から、いろいろなものが売っていた。
「こんちは〜」
「うっす」
「こんにちはー」
「中華まん10個…種類はなんか適当に。みすずはなんか食べたいのある?」
「あ、肉まんがいいです!」
店内をくるくると見ていたら、大地センパイに声をかけられたので、あわててレジに並ぶ。
「えへへ、ごちそーさまです!」
「おう!」
「みすず……?」
「はい、?」
「あ、いや悪い。知り合いにいたような気がしてな。気にしないでくれ」
それ以上、何を言うでもなくお兄さんは手際よく中華まんを包んでくれた。センパイがそれを受け取って、お礼を言ってから商店を出て行く後を着いていく。
え、あれ、もしかして……。
私はくるりと踵を返して、レジの前まで戻った。
「なんだ?買い忘れか?」
「もしかして……繋心くん、?」
「! やっぱり、お前みすずか!」
昔よくバレーボールして遊んでくれた、いわゆる近所のお兄さんだった。
坊主だった記憶しかないから気が付かなかった…。なんか凄く派手になってる。まさかこんなところで再会するなんて思いもしなかった。
「やだ繋心くん!なにその髪型!分かるわけないでしょ〜!」
「うっせえ!お前も成長してっから分かんなかったじゃねーか」
「かわいくなった?」
「へいへい、可愛い可愛い」
「あー感情こもってない!昔はあんなに優しかったのに!」
「お前が俺の後ろ着いてくるガキだったからな!」
「……知り合いなの?」
私もの分の肉まんを持って来てくれたらしい大地センパイが、驚いた顔で私と繋心くんを見比べている。
肉まんを受け取りながら、昔よく遊んでくれたお兄さんだと伝えると、偶然って凄いねと興味深そうに呟いた。大地センパイはスガ先輩と飛雄くんを呼ぶと、そのまま練習試合のポジションの話を始めたので、私はレジ前にイスを置いて、しばし昔話に花を咲かせた。
「確か…東京に引っ越したよな?」
「うん、でも…すぐ2年くらいでこっちにまた戻って来たんだ」
「ふうん。てか、そいつらと一緒にいるってこたぁ、マネージャーか?」
「そう、今日からマネージャーになりましたっ」
「なんでプレーヤー辞めたんだ?」
「…観る方に、ハマっちゃったから。そもそも選手でいるのも高校生までって話だったし、ちょうど良かったんだ」
「……」
隠しているわけでもないけど、誰にもしてないお話。
繋心くんに話すのは、私のことを少しだけ皆より知っているから。でも、なんか神妙な顔になっちゃったから、やめようやめよう。せっかく久しぶりに会えたんだから、暗い話はしたくない。
「繋心くんは?バレーボール続けてるの?」
「あー、商店街チームでな」
「へぇ。今度、試合とかあったら観に行ってもいい?」
「おっさんのバレーボール観て何が楽しいんだか」
「相手チームにイケメンいるかも知れないでしょ!」
「そうそういねぇよ!てかイケメンならここにいるだろ」
「寝言は寝てからお願いします」
頭にチョップされた。
お兄さんと再会する
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