天使と烏の日常
朝練に向かっていると、前方に見覚えのある背中が見えたので、駆け足で追い着いてみる。
「おはよ、みすずちゃん」
「! スガ先輩!おはようございます」
声を掛けながら肩を軽く叩いたんだけど、音楽を聴いてたみたいで、物凄くびっくりさせてしまった。
でも俺だとわかると、安心したのかへにゃってした笑顔になった。
って、それより、その!
「ねえ、なんで俺だけスガ先輩なの?」
「え?」
「ほら、大地は大地センパイだし、田中だって龍センパイだし…縁下のことも力センパイって呼んでたし!」
「特に深い意味は…皆さんがスガさんと呼んでいたので」
「俺も名前がいーいー」
「えーっと……孝支センパイ?」
「はあーいっ(うわ、確かにこれはイイ!)」
「(センパイだけど……かわいいっ)」
お互いにきゅんきゅんしていることなど、分かっていない2人なのであった。
◇◇◇
「翔陽くん、大丈夫?」
「うん!俺!頑張る!みすず良いとこ見せてそんで!点もいっぱい取って!ブロックもして!」
「(だめだこりゃ)」
青城との練習試合のポジションが決まってからと言うもの、翔陽くんは緊張とプレッシャーでおかしくなってしまったみたいだ。
ていうか、当日ならまだしも明日なのにこれで本当に大丈夫なのかな。
「翔陽くん」
「ハイィっ?!」
「抱っこしたら落ち着く?」
「ハィイイッ?!」
ばっと手を広げてみる。
すると後ろから肩をぐいっと掴まれたので、見上げると蛍くんがそれはもう不機嫌な顔をしていた。あの怖いです。
「はぁ?何言ってんの?バカなの?そんなんで落ち着くわけないでしょ!」
「え、でもわんちゃんとか落ち着かない時、抱っこしてあげたりするでしょ?」
「日向は犬か」
「抱っこ…!天使ちゃんの抱っこ……!!」
「田中キモい」
「んだと縁下コラ!」
「みすずボケェ!なに日向にだけやろうとしてんだ!!」
「いやお前も何あやかろうとしてんだ影山」
「だって菅原さん!抱っこっスよ!みすずの!羨ましいじゃないですか!抱き締めたことはあるけど!抱き締められたことはないんで!」
「お前やっぱりバカなんだな…ていうか抱き締めたってなに?!そっちの方がズルくない?!」
「……何これ」
「清水、みすずを回収してさっさと帰ろう」
「うん……みすずちゃん」
さっと現れた潔子センパイが私の腕を引き寄せて、ぎゅっと抱き締められた。
へっ、これは、一体なんのご褒美ですか……?!
「き、潔子センパイ…?」
「虫除け」
「「「「(尊い……!!!)」」」」
新しい扉を開きそうな烏野高校排球部だった。
天使と烏の日常
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